第二回全国学生演劇祭 2016年2月25日(土)午後5時30分開演 会場:ロームシアター・ノースホール 【概要】 全国学生演劇祭は、札幌・東北・東京・名古屋・大阪・京都・愛媛・福岡でそれぞれ運営されている学生演劇祭から、推薦を受けた団体が集い上演を行うイベント。 観客賞と審査員賞、それらの合算による大賞が選ばれる。 【感想】 ※ネタバレ有です。 今年も学生演劇祭に行ってきました。 今回の会場はロームシアター。過去の学生演劇祭プログラム(複製)なども展示されていました。 全て観た中で気に入った5作品について感想をば。(感想は観た順)。 1組目:劇団宴夢 大四国帝国 酪農学園大学の演劇部。 ストーリーとしては、日本の中で、やれ地味だ、人気ないだと虐げられた四国が、ついに日本から独立を宣言。 ところが、アメリカが侵略してくることになり対抗策を考えるが結局ロクなもんが浮かばず、アメリカの植民地になってしまいましたとさ。というもの(笑) まず一言いいたい。 アナタ方、四国を馬鹿にしてるだろ!(笑) 香川はうどんしか食べてないし、高知はヲタク。徳島は阿波踊りだけ。 愛媛にいたっては顔黒のコギャル(しかもスカートはさみで切ってる!) あんなの、きょうび愛媛だっていねーよ!(笑) なぜかアメリカが四国に戦争しかけることになるし、実は戦争じゃなくて、アメフトの試合だとか、そうかと思ったらラストで四国全員ピストルで撃たれてアメリカの植民地になるとか、もう訳わからない感が最高でした。 極め付けは、最後、戦争に負けたシーンでのナレーション。 「どうでしたか?皆さんが四国を虐げるせいで、四国はアメリカの植民地になってしまいましたよ」というのが大爆笑で。 なんで、さもリアルな既成事実のように言って、日本人に責任転嫁してんだよ!!と(笑) 実はこの作品観た時に思い出したのが、You Tubeにアップされているエロタワーという動画で。 多分、この動画を最後まで観て気に入る人なら、劇団宴夢を気に入ると思います。 あと個人的にツボだったのは大統領の秘書。 大統領が「アメリカと戦争ダーッ!」と言った瞬間、舞台袖からサングラスとピストル取り出したり。 "渡る世間は鬼ばかり"のテーマ曲にのって香川がうどんについて熱く語ってるシーンで、なぜか中華鍋ふってるし。 多分、あの秘書ならアメリカへの対抗策が浮かんだ気がする(笑) それと開演前に舞台で使う「愛媛みかん」と書いてある段ボール箱を持ってきた大統領役(高橋永人さん)がドヤ顔してて。 そのあまりにも胡散臭いドヤ顔を観た瞬間、思わず吹いて。「あぁ、これ絶対面白いわ」と思いましたよ。 始まる前に、既に笑わせてくれた時点で、この劇団への好感度は急上昇していました。(笑いといえば、エナジーフローをBGMに目薬さすシーンもありましたね) そもそも北海道が何故か四国の話やるっていうのもいいですね。最後、すいませんでしたーっ!で謝ってるのも含めて、学生らしい面白い劇でした。 2組目:劇団西一風 ピントフTM 立命館大学を中心に活動を行う演劇サークル。 舞台は工場のラインで、作業者たちが流れてくる物体にピントフ(水をスプレーみたいに出すやつをこう呼んでました)で液体をかけています。 新入りが入ったようで、その彼に、ライン作業を教えながら、淡々と作業が進み、町のお祭りへの出し物の企画などの話もあって……といったストーリー。 私、序盤は、この作品はシリアスなものだと思って観ていたのですが(多分、既に劇団を知っている?)観客からは、さして面白いと思えない仕草にも笑い声が。 そのうち工場長が新入りにピントフをプシュプシュ吹きかけるなど、普通に笑いを取りにいっていると思しき場面が増えていくうちに考えました。 この作品は「笑いを織り交ぜつつ"シニカルなムードの創出"に重点をおいた演劇」なのか? それとも「シニカルな状況や仕草で"笑わせる"ことに重点をおいたコント」なのか? で、よくよく見ると、そもそもラインにいる作業者たちがマスクをしておらず、ピントフで吹きかける量も無茶苦茶。 もしシニカルなムードに重点をおくなら、多分マスクもして、ライン作業もかなり正確。作業員もクソ真面目に作業する。でもやってること自体がそもそも無意味……という感じの方がウケると思うんですよね。 また笑いを取りにいってる場面で、他の役者も笑っていて。ああこのムードは吉本新喜劇的だな、と。 直前の劇団宴夢が全力でコメディだったのもあって、この劇団はコントで挑戦してきたのだな、と思いました。 なので、そこからはコントを観る感覚で観ていて。 その視点でいくと、もう少し笑えるシーンが欲しかった。 確かに扇風機が登場するシーンなど、数分に1度は笑いがあったので面白かったのですが。 3組目:劇団カマセナイ ナインティーン・コスプレーション 元高校演劇部の5人組。大阪学生演劇祭で旗揚げしたばかりとのこと。 最初に書くと、私にとって一番感情移入しやすかった作品はこれでした。 まずはストーリーから。 高校生のユウタはいつものように家を出て、通学して、教室にはクラスのアイドル・チイちゃんがいて。 彼女と席替えで隣になった時は嬉しかった。一緒にカラオケ行く約束もした。全ては輝いていた。 いつまでもそんな過去に絡まっているユウタ。そしてユウタとチイちゃんのクラスメート・リツコ。 リツコもまたチイちゃんのことを上手く受け容れきれないでいる。 もう高校も卒業する。でも私たちはまだこの制服を、ネクタイを脱げないでいる。 あの大好きなチイちゃんが、飛び降りてしまったこと。彼女が孤独だったこと。 もう彼女がこの世にいないこと。 いつ受け容れられるのだろう? 声を忘れ、顔を忘れ、思い出を忘れてしまったら……。 足踏みしていたいのに。 でも時間が経って、僕たちは嫌でも歳を取っていく。 チイちゃんはずっと若いまま。僕たちは嫌でもどんどん離れていってしまうのかな。 離れて進めるまでは制服を着ていたいよ。もうそれしか共有できるものがないから。 でも、歩き出さないと。前を向かないといけないということは分かっている。 私、最初にパンフのあらすじを読んだ限り、明るい青春ストーリーだと思っていて。 序盤は、実際能天気で明るい感じだったのですが、実は全然そんなことはなく、後半シリアスになって。 まず、その落差が良かった。 普遍的で分かり易いテーマ、ストーリーだったのも良かった。 進行形の存在から、想い出だけ、記憶だけの存在になってしまうことへの抗い、恐怖。 これは実体験でも多くの人が経験することだし、私自身にとっても大事なテーマなので。 去年、劇団コックピットが「あしぶみ」で残された者の悲しみと、行って(逝って)しまった者の悲しみを時代を変え、詩的に描いたのに対し、カマセナイのそれは等身大でストレート。 今回、死をテーマにした組が複数ありましたが、力み過ぎず、一番素直な形で持ってきてくれた点が、大変好印象でした。 私、あまり実験的な作品とかは理解が及んでいないので(音楽でもジョン・ケイジの4分33秒とか、ラ・モンテ・ヤングのドリームシンジゲートとかつまらないと思う性質だし。Lou Reedでも"Metal Machine Music"は1度しか聴いてないし)、こういう素直なのが好きなんですよね。 でも1箇所だけ分からないセリフがあって。 ネクタイ取ったら足踏みできるかな? 分からない。でも進まなきゃ。 僕もそう思う。……ちょっとずつでも良いよな。 うん。 という場面があったのですが。あのセリフ「ネクタイを取ったら、進めるかな?」ではないのか、と。 聞き間違えではないと思うのですが、これによって「足踏み」の持つ意味が大分変ってきてしまう。 そこは実際どうだったのか知りたいところです。 何にせよ、最後、2人がネクタイを取って、「簡単に取れるな」と言うシーン、取ったネクタイをチイちゃんが座っていた椅子にくくるシーンはベタですが切なかったです。 さて採点ですが。上記したような学生演劇に自分が求めるものと、共感のしやすさなどから5点は劇団カマセナイに入れました。 正直、劇団宴夢の着眼点、笑いへのパワーも好きで、どちらを5にするか悩んだのですが。。 で、個人賞をあげるなら、これは小野明日香さんです。 この方、出演だけでなく脚本、演出、さらには舞台監督、舞台美術までやっていて、自分のイメージした空間全体をまるごと手掛けられるタイプみたいです。 特に、チイちゃんの机に絡めた花の種類。序盤は明るい青春のようにも見え、後半は死の象徴のようにも見え。良かったです。 4組目:岡山大学演劇部 山田次郎物語 まず思ったのは「この団体は、なるべくみんなステージに出そう。同じぐらいのセリフ量を用意しようとしてるんだな」ということ。 その強い意志と団結力を感じて感動しました。 基本11人がステージにいて、小道具も擬音もメンバーでこなすスタイルは今回でも唯一。その「みんなでやろう」マインドが好き。 今回観た団体の中で「どこか1つだけ入部できますよ」って言わわれたら私、岡山大学演劇部がいい(笑) アットホーム感が物凄くて。多分、部員の仲、無茶苦茶良いんじゃないでしょうか。だってブログのタイトルも「〜岡山大学演劇部のにぎやか毎日〜」。大家族的だし。 一生モノの友達が沢山できそうな、そういう温かさをビシビシ感じました。 そんなわけで観ているのは完成した劇だけど、その背後にも思いをはせてました。 大学の部室でリハやってる姿とか。 津島運動公園で発声練習してる姿とか。 イオンモール岡山のFIG COFFEEで、台本について語り合ってる姿とか。 青春ドラマやなぁ。。(涙) ……岡山市内行ったことないけど(^-^; ストーリーや演出に「斬新さはない」みたいな評を目にしましたが、そもそも斬新さって必要なのかな? 何度も試された手法は、それが「伝わりやすい手法」だと認識されてきた証明になるだけで。 斬新=伝わるわけでもなし。観ている大多数は自分も含め、年に数回、演劇を観るかどうかのお客さんなわけだし。 まぁ私の好みといえばそれまでですが、やっていることへの信念だったり、目的。何かそういうビンビン伝わるものがあればそれでいいと思っています。 その意味で完全に応援モードになってました。 言うなれば、スラムダンクで湘北を観るような、この音とまれ!で時瀬高校を観るような気分です。 みんな「岡山大学演劇部」って入ってるシャツ着てたしね。その辺も、計算づくだったとしたら、岡山大学演劇部、良い軍師がいるなぁと思います。 「一見さんが多い大会だから、安全狙いの作品ばかり大賞にはできん」ということなら、ブレーキ役は専門家の評点が担っているし。私みたいな見方が1人ぐらいいても大勢に影響ないでしょう。 ※ただ、このイベント、"観客投票6位以下なら大賞団体は選出しない"という規定があるのですが、これは"4位以下"にすべきでは、と思います。審査員1位で、観客5位なら、むしろ審査員側が、一般との意識乖離を問題視すべきでしょう。 「しーしーしずかのしー」。なんか可愛かったですね。 私の頭では「みーみーみんなのみー」に聞こえていました。みんなで演じる山田次郎の平凡な人生、良かったです。続々・山田次郎、いつか見せて欲しい。 5組目:幻灯劇場 DADA 下馬評が無茶苦茶高く、観る前から楽しみだったのが、この幻灯劇場。 確かに、噂通りビジュアルが綺麗ですね。衣装的にも役者さん的にも。 役者さんでは、藤井颯太郎さんという方と、役名はマリアだっけ、ロッカーベイビーのお母さんやってた方。 この2人が凄い存在感が際立ってました。 結構前衛的という前評判も聞いていて。私、上の方でも書いた通り、前衛や実験には理解が及んでいないので。 さてどうかと思いましたが、なんか風景を観ているような感覚で楽しめました。 正直、ストーリーは断片しか把握できていません。ビートニクの詩みたいに。 でも、めくるめくシーンが綺麗だなぁ、と。 そりゃ粋な格好した、いいビジュアルがパフォーマンスしてたら視覚的には綺麗だなぁ、と思いますよ。 ただ、やっぱり私も音楽をやっているので、ライヴシーンでのヴォーカルはちょっといただけませんでした。 多分、調子が悪かったのだと思いますが、あれはビシッとキマらないと、そこで一回切れちゃうんですよね。全然受ける印象変わります。 というのも、この団体から感じたのは、"疾走感"というキーワードで。 なのでセリフ噛んだり、音程ズレてたりすると凄い目立つ(というか、ごまかしが効きづらい)ように思いました。 役者さんも緊張感あったんじゃないでしょうか。 この日の公演で、用意していたものを100%出し切れていたかというと、多分、違うように思います。 それでも綺麗だったということは、100%だったら、大感動するレベルだと思うんですよね。 なので、次作も観れたら観たいです。 あと、早稲田の躍り侍とコラボして欲しい。スタイリッシュ&ロックンロールな感じで、合同で何かやったらハマると思います。 |
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