ミュージカル「アナスタシア」 2023年10月29日(日)17時30分開演 会場:梅田芸術劇場メインホール 脚本:テレンス・マクナリー 美術:アレクサンダー・ドッジ 衣装:リンダ・チョー 照明:ドナルド・ホルダー アーニャ:葵わかな ディミトリ:相葉裕樹 グレブ:田代万里生 ヴラド:大澄賢也 マリア皇太后:麻実れい リリー:堀内敬子 ニコライ2世とその家族が処刑された際、第四皇女のアナスタシアが生き延びたというアナスタシア伝説。 その伝説から映画「追想」が生まれ、さらにリメイク映画のアニメ「アナスタシア」が生み出された。 本作はアニメ版に着想を得て制作されたミュージカルで、ブロードウェイで2年間のロングランとなった。 世界各国でも上演され、日本では2020年3月から全52公演が予定されていたが新型コロナウィルスの影響で、大阪の全公演を含む38公演が中止に……。それから3年を経ての再演が今回で、大阪では初演となる。 主要な役どころはいずれもWキャストで、主人公・アーニャは葵わかなさんと木下晴香さん。 朝ドラ好きとしては、「わろてんか」の"おてんちゃん"ということで葵さんの回を観に行ってきた。 で、結論としては今年観た舞台の中でも、特に素晴らしい内容だった。 まず最初に、舞台が綺麗! ロシアの透き通るような冷たさを感じさせる蒼い照明、皇族たちの煌びやかな衣装、バックのLED映像による街並み。 これらが視覚的にとにかく綺麗で、始まってすぐ、そこに惹きこまれた。 そして生オケにのって歌われる曲。 ディミトリが生い立ちを語るシーンはじめ、どれも物語にハマっている。 葵わかなさんの声、細いが上手い。声質が綺麗。さらに相葉裕樹さんも、とても上手い。 2幕前半、大澄賢也さんと堀内敬子さんのパフォーマンスは(ちょっと長かったけど)さすがだし、少し前に観た「生きる」が和風だったのに対して、いかにもミュージカルらしいミュージカルを観たという感じ。 映画版を全く観ていなかったので、パリへの道中、めくりめく展開にワクワクしたし、(アフタートークでも印象的なシーンとして挙がっていた)登場人物が一堂に介してバレエを観るシーンは、壮観だった。 あとラスボス感半端ない麻実れいさんが"何人もの偽物アナスタシアと出会い、期待を裏切られ疲れ果てた"ことを恨み節のように囁くものだから、心中お察しして哀しくなった。 実際のアレクサンドル3世皇后(アナスタシアの祖母)は、息子一家の死後も存命で、その死を受け容れられず(実際には受け容れていたのだろうが)苦しんだらしい。そしてアナスタシア僭称者として有名なアンナ・アンダーソンにも決して会わなかったそうだ。 この辺が、物語のセリフにも織り込まれていて、だからこそ本物のアナスタシアだと確信して抱きしめるシーンや、ラストでアナスタシア……いや、アーニャの旅立ちを受け容れるシーンは感動的だった。 終演後は葵わかなさん、相葉裕樹さん、田代万里生さんによるアフタートークがあった。 記憶している限り、以下に内容を付記しておく。 ------ Q. 今日の公演はどうだった? A. いつもベストを尽くせるようにしているが、熱量がこもって情が入り、切ない気持ちになりつつも、楽しさを感じつつ気づいたら終わった感じ(葵) Q. アーニャはどんな女性? 演出からは「強い女性であって欲しい」と言われていた。弱さもあるが自分の足で一歩一歩進む様を、演じる上で大事にした(葵) Q. ディミトリはどんな人? ディミトリは反骨精神の塊。彼自身もアーニャと出会い成長していくし、アーニャとは違う強さを持っている(相葉) Q. グレブは? グレブは革命と戦争の犠牲者なので屈折した部分はあるが、アーニャと出会ったことで、自分の中で克服していく。 演出からは、彼の父は、暗殺をしてしまい後悔して自殺したとのこと。それを見て彼も苦悩してきた(田代) Q. 好きなシーンは? 電車乗りたかった?!あのシーンの仲間に入りたかった!(田代) 電車のシーンはワクワクする。パリに行くワクワク感。列車の乗客に絡んだり自由にできて楽しかった(相葉) 列車のシーンも良かったし、2幕オペラ座でのバレエシーンも一同集結し、映像、照明、バレエと厚みがあって凄い。 そんな中で出会っていないディミトリたちの歌が観客に伝えるオシャレなシーンだと思う(葵) Q. LED映像や音楽はどうだったか? LED映像は演じている時は映像が近すぎて認識できないけど、引いて見ると本物と見紛うレベルで、自分が街並みや景色に溶け込んだようだった。音楽も贅沢な時間を作ってくれた(葵) Q. 最後にメッセージを。 観劇して下さって有難うございます。東京から始まった公演だがあと2公演。 自分でもかけがえのない作品になって、3年前からアーニャを演じられて嬉しい。 最後まで駆け抜けたい(葵) 3年越しにできて本当に嬉しい。 僕はあと1公演だが、悔いなく楽しくやりきりたい(相葉) 梅田芸術劇場のシャンデリアがアナスタシアの世界にピッタリ。 この公演は見えない沢山のスタッフの力で成り立っているが、観客が沢山入っていることで作り手としても作り甲斐がある。 作品を通じ、心に何か持ち帰って欲しい。 -------- というわけで、非常に満足度が高く、心の高鳴りというか。そういうミュージカルの楽しさを持ち帰ることができた公演だった。 |
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