ミュージカル「生きる」 2023年10月1日(日)13時10分開演 会場:梅田芸術劇場メインホール 原作:黒澤明監督作品「生きる」 演出:宮本亜門 作曲・編曲:ジェイソン・ハウランド 渡辺勘治:市村正親 渡辺光男:齋藤信吾 小説家:上原理生 高野菜々:小田切とよ 少し前だが、ミュージカル「生きる」を観劇した。 きっかけは市村正親さん。2015年のART(再演)以来観る機会がなかったが、今年は役者生活50周年と節目の年。 「市村座」は都合が合わず行けなかったので、こちらに足を運んだ。 本作は、1952年公開の黒澤映画を2018年にミュージカル化したもので、今回が3度目の上演。 市村さんは初演から出演されていて、「等身大の日本人を演じられる」のが嬉しいと語っている。 「生きる」のストーリーは、「家では息子夫婦とのすれ違い、職場(市役所)では何をなすでもなく空気のような日々を送る主人公・勘治が癌になり、余命が僅かだと知ったことで本当の意味で"生きたい"と思い、公園づくりに余生をかける」というもの。 生きること、情熱を傾けることの美しさを描いた作品で、「私も生きよう!」とポジティブな活力を与えてくれる作品。 どの時代にも響く普遍的なメッセージゆえか、2022年にカズオ・イシグロの脚本によってリメイク映画も製作された。 ミュージカル版は、休憩を挟み、1時間×2=2時間の大作ながら、ミュージカルらしく歌やダンスで進行するためあっという間。 ただ個人的には、自暴自棄になった勘治が夜の街で遊ぶくだりが(華やかなのだけど)長すぎて、公園を造ろうと奔走する姿が若干薄い印象を受けた。 勘治は哀れっぽく「公園を造りたいんです。お願いします」と繰り返しているだけで、結局お偉いさんの不正現場を撮影できたから公園が作れた……みたいな展開に違和感があった。 もっと勘治の真剣で静かな情熱みたいなものを感じたかった。 とは言うものの、勘治が「心の望むままに生きよう」と決意し歌うシーンや公園のブランコで佇むラストシーンには思わず涙が。 パンフレットで市村さんが「(勘治が息子に癌や公園のことを言わずに亡くなるが)そこには、"限りある人生だけど、一日一日をしっかり丁寧に歩くんだ。生きているだけで美しいんだ」という父としての思いが遺されている」と話されていて、ラストはこれが凝縮された光景だった。 ところで大千秋楽だったこの日の公演は、開演前に体調不良者が出たため、急遽光男役が齋藤信吾さんにキャストチェンジされた。 アフタートークによると、齋藤さんは当日朝、東京で知らせを受け、新幹線に乗っている間ずっと脚本とにらめっこして来たらしい。 この影響で、開場・開演時間とも予定より遅れるトラブルもあり、緊張の開演となったが、無事に完走。 出演陣からも齋藤さんに感謝と労いのコメントが溢れていた。(市村さんからは「今回の活躍で、今後の仕事は一層安定すると思います」とのジョークも) 市村さんは最後に「私も(Wキャストの)鹿賀(丈史)と話しますが、お互い元気な間は頑張ろう、舞台に立ち続けようと思っています」と力強いメッセージ。 これからも市村さんの姿は定期的に観たい。 |
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