Mr.Win's Room

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Bob Dylan @ Bill Graham Civic Auditorium, San Francisco, CA, USA 17.10.2012



(ステージで踊るボブ)

-Set List-
1. Watching The River Flow
2. Man In The Long Black Coat
3. Things Have Changed
4. Tangled Up In Blue
5. Cry A While
6. Joey
7. Beyond Here Lies Nothin'
8. Visions Of Johanna
9. Highway 61 Revisited
10. Forgetful Heart
11. Thunder On The Mountain
12. Ballad Of A Thin Man
13. Like A Rolling Stone
14. All Along The Watchtower

(encore)
15. Blowin' In The Wind

(感想)
親切な老婦人と別れ、チェックイン。
一段落した後、ホテルを出ていよいよ2年ぶりのボブ!ワクワクしながら会場のBill Graham Civic Auditoriumに向かう。


開場2時間前。


これも開場2時間前。"Bob Dylan"の文字にワクワクはさらに高まる。


会場の告知ポスター。

会場は1Fに入って手前左奥がグッズ売り場。手前右奥が救護班の待機場所。そして1Fスタンディングフロアの右側にはドリンク・バー。
入って早々にグッズ売り場で公演ポスターやTシャツなど一通り購入し、カクテルを飲んで気分よく座席へ。
今回は2公演とも2F席の前の方なので全体が非常に観やすい……って座って早々、隣のおばちゃんが声をかけてきた。
「Hello!楽しみね!」
「楽しみだね。あと1時間後だよ」
「まずマーク・ノップラーが演るからボブは2時間半後ぐらいかしら。あなたはどこから来たの?」
「日本から」
「まぁ、随分遠くから来たのね!」
「ちょっくらボブを観に来たんだよ」
「素晴らしいわ!」
そこへ反対側の隣席の男性が「日本から来たって?Welcome!!」と会話に乱入。
結局、開演までず〜っと話し込んでいました(笑)

そんなこんなで開演時間になり、司会者らしき男性がステージに。マーク・ノップラー・バンドを紹介。
まずはマーク・ノップラーのステージ!
実はこの時点ではマーク・ノップラーもダイアー・ストレイツも全然聴いていなかったのですが(ボブ絡み、クラプトン絡みの音、映像では聴いていた)、彼のステージが非常に良かった!!帰国後アルバムを複数枚購入してしまった程にです!
購入した1枚が大ヒット作"Sailing to Philadelphia"。
歓声の中始まった1曲目はその"Sailing to Philadelphia"のオープニング曲"What It Is"でした。
流れるような哀愁漂うメロディー。オリジナルverでは入っていない横笛がオリエンタルなムードを一層盛り上げ、素晴らしい演奏!
続く2012年リリースのアルバム"Privateering"からの2曲、"Corned Beef City"と"Pribateering"もいい曲でどっぷりとノップラー・ワールドに引きこまれたわけですが、特に気に入った曲について掻い摘んで紹介します。
3曲目の"Pribateering"はピッキングの上手さが光るフォークソング。ギター弾き語りの途中からバンドが入ってくる辺り、ボブのJohn Brownを彷彿とさせます。
一番気に入った曲がナポレオンに従軍する兵士の視点を歌った"Done With Bonaparte"。アイリッシュ・トラッドと言われても違和感のないムードをもった曲で、この後の公演でも楽しみな1曲になりました。
そしてアンコールの"So Far Away"。セットリスト中、唯一ダイアー・ストレイツ時代の曲。これも非常に耳障りの良いポップな曲でした。



ちなみにセットリストは以下。
1. What It Is
2. Corned Beef City
3. Privateering
4. You Two Crows
5. I Used to Could
6. Song for Sonny Liston
7. Done With Bonaparte
8. Hill Farmer's Blues
9. Haul Away
10. Marbletown

-encore-
11. So Far Away

マーク・ノップラーのステージが終わり、ステージ・セットのチェンジ。



さぁ、いよいよ初めてアメリカで観るボブ。
会場が暗くなり、スチュがギターを弾いて先導し、メンバーが登場。
今回は来日時のようなイントロの紹介アナウンスは無し。
明るくなったときにはバンドメンバーが並んでいました!



白いハットに黒いジャケット、それにラインの入った黒のズボン。
いつもと変わらぬ衣装を身にまとったボブの登場に大興奮!

1曲目は、"Watching The River Flow"!
2010年の来日初日(大阪公演)を思い出します。
メンバーの立ち位置も変わりませんが、今回はチャーリー・セクストンが前面に出て演奏パフォーマンスすることもなく、バンドメンバーは自分のポジションで黙々と演奏していました。
ボブのヴォーカルの切れ味がいい!特に"People disagreeing on all just about everything, yeah"の部分は凄い勢いで歌ってました。格好いい!
"もしも羽があったなら、俺は飛び立つだろうになぁ。俺は行くべき場所を知ってるんだ。でも俺は今、満足そうにここに座ってる。そうして川の流れを見つめているんだ"という歌詞を聴きながら、京都のカフェだったり、昼間に行ったカフェ・トリエステを思い出したり(ここからは川は見えないけど、きっとボブも満足そうにコーヒー飲んだことがあるはず!)

そして2曲目が"Man In The Long Black Coat"!
おお!これも大阪以来だ!"Oh Mercy"大好きな私としては嬉しい!最近のセットリストでもたまに顔を出す程度で聴ける確率は低いと思っていただけになおさら!!
間奏でピアノを弾くボブ。予想通り、打楽器のような使い方での演奏です。

そして3曲目がテンポアップした"Things Have Changed"!
ここからボブが立ち上がり、マイクを手にダンス!
コミカルで可愛い感じのパフォーマンスは憧れていたチャップリンを彷彿とさせます。
"Watching The River Flow"でも感じたボブのヴォーカルの鋭さがここでかなり顕著に。文(時に単語レベルで)を短くきって歌うので、曲の輪郭が非常に明確になっています。
後半のブルーズハープ演奏はもう完全にボブの世界。
多少音が外れていてもキーさえ合っていればお構いなしという演奏。
全体的にカントリー・テイストが強くなった"Things Have Changed"。恐らく、ダンス・パフォーマンスありきでこのアレンジになったと推察。

さぁ続くのが"Tangled Up In Blue"!これは来日時に聴けなかったアレンジが楽しみだった曲。
まず1番の歌詞が"Real Live"と全く同じになっていました。
2番はオリジナルverの歌詞。3番は殆どが"Real Live"と同様、"He"に関するストーリーに。ただし途中は若干オリジナルverの歌詞も混ざっていました。
"Real Live"では"He put it all down and split"と歌っていた部分は"He put everything down and split"になり、オリジナルverで"New Orleansに流れ着き、偶然採用されて漁船で働いてた"というストーリーだったのが、"ニューオリンズへと昼も夜も漂流し、しばらく漁船で働いてた"になり。
そしてこの後ブルーズハープの間奏が挟まってピアノに戻り、オリジナルverの7番("So now I'm going back again〜")を弾き語るという短縮バージョン。
個人的には"Real Live"、オリジナルver、それに2001年来日時のアレンジが好きですが、このアレンジはこのアレンジで格好いい!観れて良かった!
"Things Have Changed"〜"Tangled Up In Blue"はボブのダンス・タイムだからか、今年の公演でも必ず3〜4曲目で歌われています。

そして"Cry A While"。"Love & Theft"では"どブルーズ"という感じのスローなアレンジでしたが、ライヴでは若干ポップな感じに。
これも2010年の来日では聴けなかった1曲です!

しかしこの後の公演も含め最大のレア曲はこの次"Joey"でした!
最近のセットリストでも登場しておらず、日本でも聴いたことがない!!初めて聴く生"Joey"!!
これが無茶苦茶格好いい!こんなにいい曲だったのか!と驚くぐらい素晴らしかった!
"Dylan & The Dead"に近いアレンジですが、あれはDeadらしい緩さがあったのに対し、ハイハットやボブ自身のピアノによるコード演奏でタイトに。
リズム感が強調されているのが今のボブのヴォーカルにピッタリで緊張感すらある名演でした!
これは間違いなく最大の目玉でしょう。

次は"Beyond Here Lies Nothin'"。
来日時同様、オリジナルに近いアレンジですがチャーリー・セクストンが淡々と演奏している点が異なるか。

そして……おお!このイントロは!!"Visions Of Johanna"きた〜〜!!!!!!
ボブがピアノを弾き出した時、一番に浮かんだのがこの曲で。きっとボブのピアノが凄く映えるんじゃないかな、と思っていたのですが予想通り!
優しいムードが強調されており絶品でした。生で聴くのは2001年以来。これもこの日のハイライト。

そして"Highway 61 Revisited"!後半の間奏はギターとピアノでユニゾン気味に。
他の曲でも感じたのですが最近のボブは既成曲に新たなリフを与えようとしているのではないか(曲によっては、ファンが馴染んでいる印象的なリフを敢えて崩そうとしているのでは)と思います。
この曲ではそこまで目立っていませんが、ある曲のリフをかなり崩そうとしていたのが印象に残っています(この話は3公演目Berkeleyの感想で書きます)

"Forgetful Heart"は相変わらず重々しい感じ。ボブのブルーズハープがマッチしていました。

そしてこの後"Thunder On The Mountain"からは2010年でもお馴染みの流れ。
しかし今回の"Ballad Of A Thin Man"では、ヴォーカルマイクに変化あり!
ディレイを大きく効かせており、やまびこのように反響するボブのヴォーカル、そしてブルーズハープ。
これがこの曲のマイナーなムードに見事にハマっており、インパクト抜群でした。

"Like A Rolling Stone"は日本で短縮されていた歌詞が元通りに!ボブのヴォーカルは気合入りまくりで"I say how does it feel?"と"I say"が入る勢い!!
これが格好良かった。

ここでバンドメンバー紹介があり、続いて"All Along The Watchtower"。
今回は流れるようなスピード感もありつつ、パワーもありつつというアレンジ。途中上述した通り、歌詞を単語ずつ区切るように歌う場面もありましたが、全体的には風が吹き抜けるような感じ。
これまた格好良い演奏で気に入りました。ベースも音数が増えていて、それも含めて良かった。

そしてアンコールは"Blowin' In The Wind"。これは日本公演と同じアレンジ。最後、演奏が終わりメンバーが帰った後も「もしやのダブルアンコール」を期待して観客席は手拍子が続いていましたが、客電がついてライヴ終了。
この後、ライヴ前に話していた両サイドのお二人と意気投合し、「よし!俺たちは地元だから君のホテルの近くのバーで飲もうじゃないか!奢るよ!」と言われ3時30分頃までバーでライヴの感想などBroken Englishを駆使して言い合っていました(笑)
ボブは勿論、アメリカのフレンドリーな国民性に触れられたこと&奢ってもらったことですっかり満腹な一夜でした。

(2012/10/17)


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