Vector 2014年10月19日(日)午後6時30分開演 会場:石清水八幡宮・野外特設ステージ 脚本・演出:近藤和見 出演: 仏工夫:草壁カゲロヲ 仏工妻:谷弘恵 舎人A・旅する男:東洋 鳥女A・旅する女:渡辺綾子 カムロ:川北唯 ほか 【ストーリー&感想】 知人が出演、しかも場所は石清水八幡宮の野外ステージということで興味が湧き、観劇した。 ロヲタルヴォガというと、かれこれ5年ぐらい前に一度、偶然観劇したことがある劇団。 その時も、結構面白かったのと、変わった劇団名だったので覚えていた。 石清水八幡宮に行くと開場時間(17:30)の段階で結構な客が入っており盛況。 最前列ど真ん中を確保して前を見ると、そこには木々を背景にした幻想的な舞台が(写真は開演前に撮影したもの) 開演に先立ち、脚本・演出の近藤氏による挨拶。 ・ヴォガにとって10回目の本公演。今年で18年目を迎える。18年の活動で本公演はわずか10回と苦労しながら死に物狂いでやってきて、節目の10回目をこんな由緒ある素晴らしい場所でできて嬉しい。 ・石清水八幡宮で連想したのが今昔物語。かの物語にもこの地が登場する。 ・今回は、今昔物語のエピソードを作るようなイメージで、現代にも通じるテーマとして"ベクトル"というキーワードを掲げた。 さてストーリー。 仏工の女房が登場し、世のために立派な仏工となるべく、田舎から夫婦で都に来た身の上を語る。 女房は夫に期待している。夫が上京の目的を果たすこと。それが彼女のベクトル。 が、帰ってきた仏工の様子がおかしい。仏工は侍の争い現場から、金品を盗んできたのだ。 それを売って金にしようとする夫。その行為に違和感を覚えながらも従う女房。 そんな悪事や平家への批判。これらを見つけては密告すること。 それが自身に与えられた役割であり、ベクトルと認識し、無邪気に果たす禿(かむろ)。 「これからは力の時代。時代は変わるのだ」という悪党。 彼は夢のとおりに進んでいる。ベクトルを阻害する要因があるならば、力で変えれば良いのだ。 こんな若者もいる。 本当の夢、目指すべきベクトルは歌を詠い、愛する人を見つけ平和に過ごすこと。でも自分は貴族の警備職たる舎人である、という固定概念、価値観に絡まっている。 彼はやがて、その固定概念を捨て、想い人を想う。 さて仏工は盗品を売り、米俵を3つも得る身となる。 仏工の夢は、人のためになる仏の像を作ることだった。だが、門閥や財力がなければ、それは都では叶わないこと。 そう思い、彼のベクトルは、生きること。贅沢に暮らすことに歪んでいく。 どうせ立派な仏工にはなれないのだ。ならば、贅沢し一生を暮らせるならばそれで良いではないか。 仏工の女房は、元来、夫と同じベクトルを向いていた。夫が人のためになる仏の像を作ることを望んでいた。 そのためには生きていなければならない。争い現場から金品を盗むことは、そのための悪か? 疑問に思い、そして夫のベクトルを確認する。 夫は門閥や財力を、良い仏工になるための前提条件としているが、彼女はそうは思わない。 本来夫が抱いたベクトルに軌道修正しようとする。 が、2人はひっ捕らえられバラバラに離れる。 夫は連行されながら女房の身を案じる。 しかし「女房が犯されているだろう」と言われ、絶望し、口も聞けなくなる。 ベクトルは揺り動かされ、そして最後に辿りついたのは、最初のベクトル=自分の仏を一心不乱に打つこと。 女房は犯される。仏工に会いたいが、探し方すら分からない。夢へのプロセスすらない。 絶望し死を選ぼうとするが、仏工からの生き抜くという言葉を思い出し、それをもって自らの拠り所とする。 生きること自体をベクトルに狂人となりながらも、歩く。 禿は仏工や女房の姿を見る。変わり果て、それでも2人のベクトルは、お互いが寄り添うためのもの。 人と人が寄り添い生きていることを知り、自らのベクトルは修正すべきものだと思う。 そして仏工はついに自身の仏=女房の像を完成させる。 禿は、女房を連れ出し、仏工の前へと導く。 それは誰かが変えたベクトルによって、また別なる誰かのベクトルが交差した瞬間。 本来の描いていたベクトル、そして強く希求するベクトルが交差した瞬間。 現代で出会う男と女。前からずっと見知っていたような感覚。 2人は会話を交わして共に歩く。 どうやらベクトルが合いそうだね、と言いながら。 ……随分ざっくりですが、大筋はこんな感じだった。 序盤〜中盤にかけてはミュージカルシーン、観念的なセリフが長く、冗長だった印象は拭えないが、それでも中だるみしなかったのはひとえに野外舞台の美しさ。 ライトアップされた幻想空間は、それだけで絵になっていた。 そして、後半の展開は見事の一言。 特に、仏工と女房の再会で、噴水の壁に照明があたるシーンは、本当に綺麗で惹きこまれた。 "ベクトル"というテーマが、あぁ、そういう意味だったのかと、話が進むうちに色々と考えさせられる場面もあり、楽しめた。 良い演劇を観れたなと思う。 |
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