歌わせたい男たち 2022年12月24日(土)午後2時00分開演 会場:びわ湖ホール 作・演出:永井愛 出演者:キムラ緑子、山中崇、大窪人衛、うらじぬの、相島一之 【客入り】 満員。年齢層は大分高め。 【感想】 「学校における国歌斉唱問題」を扱った作品。 前年に不起立・不斉唱者が出て教育委員会から注意を受けた公立高校が舞台で、 ・今年は何としても無事に卒業式を終えたい校長 ・君が代問題への関心は薄く、転職先(学校)の職を失わないよう無事に終わって欲しい音楽教師 ・君が代は「天皇崇拝」の意味合いが強く、大日本帝国を彷彿とさせるので歌いたくない歴史教師 が主な登場人物。歌わせたい派・歌わない派のやり取りを通じ「内心の自由とは?」が物語の主軸になっている。 私はこの分野について不勉強だったのだが、2004年、東京都教育委員会は「君が代斉唱」をしなかった教職員を大量に処分。 「内心の自由」が踏みにじられる行き過ぎた処分だったにも関わらず、新聞では三面記事にちらっと載った程度で、これが永井愛さんが本作を書くきっかけになったそうだ。 初演は2005年で、2008年に再演され、今回が14年ぶりの再演となる。 永井さんのアフタートークによると、ステージも台本も殆ど変わっておらず、時代に合わせて「スマホで撮らないで!」とか、些細な変化があっただけらしい。 「君が代問題」も根本的に解決されたわけでなく小康状態になっているだけで、例えば「(歌わなそうな教師は)卒業式の間だけ担任を解く」とか「駐車場担当にする」といったコントのようなことが今も実際にあるそうだ。 事実は小説よりも奇なり。そういった事実を知り、「そういえば4〜5年前にも共謀罪で"内心の自由"がクローズアップされていたな」など思いを巡らせたりできた意味では、本作を観た価値はあった。 ただ劇として満足度が高かったかというと、それは別問題。 本作は過去、様々な賞を獲り、世間では名作と称えられているので、以下は私の勝手な価値観での話だが。 私にとって「良い演劇」は、「ただ事実を伝えるもの」ではなく「エンターテイメント性をまとい、おかしみがあるもの」だ。 その点で、本作は始終、台詞が理屈っぽく問題集の解説のようで、論点がズレていく様もイマイチおかしみがなく、淡々としていた。 よって、鑑賞後、「君が代問題」や「内心の自由」は頭に残ったが、本作の筋そのものに対する印象は殆ど残らなかった。 くしゃみや、眼鏡のくだりは面白いという程ではなかったし、保健室という密閉空間で話が進むのも(内容が内容なので)窮屈な感じがした。もっと躍動感があって笑える要素を散りばめた方が作品としても魅力的だったように思う。 またペラッペラの薄いパンフレットに1000円というぼったくり価格も印象が悪く、値段に見合った価値がある作品とは言い難かった。 |
|