売り言葉 2002年2月13日(水)午後3時開演 会場:スパイラルホール 作・演出:野田秀樹 出演:大竹しのぶ ヴァイオリン奏者:渡辺剛 声の出演:白石加代子/野田秀樹/多くの親しいお友達 【ストーリー】 "智恵子抄"で有名な、高村光太郎の妻・智恵子。 彼女は、福島県の裕福な家庭に生まれ、親を無理矢理説得し女学校、そして東京の大学へ進学する。 洋画に興味を持った智恵子は、大学卒業後、壁にぶつかりつつも絵に取り組み、また平塚雷鳥の女子思想運動に共鳴する。 そんな中、高村光太郎と出会い、結婚。 2人は、共に芸術を志す、パートナーだったはずが、徐々に変化が起こってゆく。 光太郎が、芸術家としてどんどん前進する一方、智恵子の描いた絵は文展落選。 画は認められず、更に裕福だった実家も破産。 光太郎の描く「智恵子」像であろうとする程に、像とは乖離してゆく自分自身を思い知る智恵子。 彼女は、遂に精神に破綻をきたしてしまう……。 【客入り】 年齢層は様々。女性が多かった。 【感想】 素晴らしい作品だった。時間を忘れて、大竹しのぶさんの演技に魅入り、「次はどうなってしまうんだろう」と展開にドキドキするひとときだった。 「智恵子抄」で描かれる純愛は美しいが、現実、清らかだけなんてことはなく、ドロっとした、生々しい暮らしがあったと。 "智恵子がわざと狂ったふりをした"と言われると、なるほどと思えてしまう。 本作は、野田秀樹さんが大竹しのぶさんのために書き下ろし、演出した作品。 野田さんは「"智恵子抄"で狂気を扱ってみようと思ったのは、ひとえに大竹しのぶさんという稀有な女優がいたから」と語っている。 実際、大竹さん演じる智恵子が「光太郎と会うまでの、笑い溢れる明るい智恵子」から「絵に挫折し、光太郎の愛への不安、苛立ち、孤独を抱える智恵子」に変化していく様には、息をのんだ。圧倒された。 本心をぶちまけたいが、光太郎を前にすると、愛想の良いことを言ってしまう。 実家も破産し、頼ってくる人々には、「全て私に任せなさい」、「私に任せなさい」、「私に……私に……私に……」 "あなたが見る世界"と"私が見る世界"は一緒なの? だって、純愛の智恵子抄を書いた男が、6ヶ月間も入院している私を見舞いに来ないで、他の女と文通してたのよ。 彼は芸術家。そう。彼は芸術家なの。 私は芸術家の妻であり、私自身も芸術……。まるで自分を芸術家と言いながら、死を待つぐらいしかない、前に会った女と同じじゃない! 凄かったなぁ。あと、開演前にジャニス・ジョップリンの曲がかかっていて"Move Over"の途中、いきなり自転車に乗った大竹さんが登場する……という始まり方だったのだが。ジャニスも"愛は生きてるうちに"な人なので、なんか劇中の智恵子とシンクロする部分もあり、終わってからジーンときた。 |
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