茂造の失われた記憶 2013年04月23日(火)、5月6日(月) 午後7時00分開演 会場:祇園花月 作:辻本茂雄、徳田博丸 演出:辻本茂雄 辻本茂雄、桐生シーナ、井上竜夫、島田珠代、西川忠志、後藤秀樹、伊賀健二、平山昌雄、前田真希、前田まみ他 【概要】 吉本新喜劇・辻本茂雄が演じる人気キャラクター"茂造爺さん"のルーツを紐解くお芝居。 2009年から上演されており、今回が第5弾。 【客入り】 子供連れの家族が主だが、個人客もそれなりに多し。 満杯。 【感想】 一時期、吉本新喜劇にハマり、祇園花月にも足繁く通っていた。 当時、一番好きだったキャラクターは辻本茂雄さんが演じる茂造じいさん。 ・登場していきなり客のかばんを蹴り上げる。 ・壁を叩き、階段を滑り台にする。 ・「はいはい。"はい"は一回」と自分で突っ込む。 ・話の流れに似合いすぎな携帯電話の着メロで周囲をズッコケさせる。 など、お決まりのパターンはもはや様式美。 そんな茂造じいさんのルーツを紐解くシリーズ第五弾"茂造の失われた記憶"の初日を観に行った。 大人気の公演で、去年はチケットが取れなかった。今回は行く前からワクワクだったが、結果、本当に素晴らしかった! 笑って泣けて、感動また感動だった。 前半はいつも通りの新喜劇。 辻本さんはじめ、いつものメンバーによる一連の笑いに加え、新しく入団した木下鮎美さんも特技の寿限無を活かして笑いを取っていく。 前半の白眉は、"ヤクザの父に捨てられ旅館で育てられた娘"役の前田まみさん。 「母親は父に苦労をかけられて亡くなった。自分に父親はいない」と信じているのだが、旅館買収を計画して襲い掛かってきた強盗に、幼い頃から慕っている旅館の使用人・平山昌雄さんが(ヤクザ稼業から足を洗い密かに見守っていた)実の父だと教えられ、ショックを受ける。 このショックを受けてから、父親を許すまでの過程が、まさに迫真の演技。驚きと動揺、その後、怒りと戸惑いで目を赤く腫らし、涙を浮かべ、去ろうとする父親に「2回も私を捨てないで!」と追いすがる。 新喜劇でよくある流れながら、いつも以上に胸に迫る名演だった。 新喜劇はシリアスなシーンがシリアスになるほど、ギャップで笑うシーンが一層盛り上がる。 その意味でも前半のハイライトだった。 そして後半。時は平成元年に遡り、茂造は病院の先生。 清掃員役の島田珠代さんに迫られたり(リアルでは離婚直後の珠代さん。早速ネタにされ、笑いに転嫁していた)、その珠代さんを追っかけてきた伊賀健二さんを「横顔新幹線や〜ん!」といじったり(今回は"黄色い線"ではなく"白線"。"レールスター"ではなく"こだま")。 桐生シーナさん(看護婦長で茂造の恋人)と幸せいっぱいの茂造が照れながらドリカムの"未来予想図"を歌うシーンでは笑いも起こっていた。 ちなみに病院で患者の1人を演じる佐藤太一郎さんはオカマ役。事故に遭った際、心が前田真希さんと入れ替わってしまったという設定で、前田真希さんが佐藤太一郎さんの恋人に、必死に「姿は女だけど、心は俺が太一郎なんや!」と恋人同士しか知らない秘密をまくしたてるシーンは、この日の"笑い"のハイライトだった。 しかし、その後、幸せな新婚生活を送る茂造夫妻に悲劇が。看護婦長は、脳を侵され痴呆症となり、記憶をどんどん失っていくことに。。 大事な人たちを忘れてしまうこと、いずれ愛する人にとっても邪魔な存在になってしまうのでは……と絶望し、それでも入院して病気と向き合う姿。この辺りから個人的には結構ジーンときていて。 記憶が学生時代に戻り、(学生時代に付き合っていた)院長を恋人と思い、茂造をただの友達として扱う場面、さらに記憶が幼児期に戻り、「私、将来看護婦になりたいの」と無邪気に言う妻に茂造が「君は将来、沢山の医者や看護婦さんに尊敬され、沢山の患者に慕われる看護婦長になるよ」と言う場面、さらには思い出の曲"未来予想図"を茂造が歌う場面は本気で涙が出た。 ラストは新喜劇らしく明るく笑いで締め、歌も有り。あっという間の2時間。沢山の元気をもらった2時間だった。 |
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