サザエさん 2019年10月13日(日)午前11時00分開演 会場:博多座 脚本、演出:田村孝裕 フグ田サザエ:藤原紀香 フグ田マスオ:葛山信吾 磯野浪平:松平健 磯野フネ:高橋惠子 磯野カツオ:荒巻慶彦 磯野ワカメ:秋元真夏 フグ田タラオ:大平峻也 【概要】 テレビアニメ50周年を記念しての「サザエさん」の舞台化。 【感想】 「これじゃない」 この感想に尽きる。なぜか? 最大の問題は、一応ハッピーエンドのラスト数分を除き「物語の大半が重苦しいムード」であること。 「サザエさん」と聞いたら、普通、明るいサザエさんによるテンポの良いドタバタ劇を想像する。 舞台化を知った時、頭に浮かんだのは「10年経っても相変わらずお転婆なサザエやいたずら好きなカツオがドタバタやってる」様子だったし、それこそが期待したものだった。 ところが、ふたを開けると、 ・波平の誕生日に予定が入り、マスオもカツオもワカメも集まれず、波平いじける。 →サブちゃんと呑みに行く。 →帰宅後、謝るカツオやワカメに、波平が説教。家族が分裂の危機になる。 →あの頃は良かったと、昔を思い出して泣くサザエ。 (ちなみに、フネだけ、タマと会話できるというキテレツな設定付き) こんなドンヨリとしたサザエさんを観て、どうしろと。。 せっかくのおめでたい放送50周年で、何故こんな暗い内容にしたのだろう。さすがに脚本家の資質を疑うレベル。 長時間、抑揚のない展開がダラダラ進んでいた感は否めない。 パンフレットに、 「サザエさん」のモノマネばかりしていては、漫画やアニメの面白さを超えることはできない とあるが、サザエさんからユーモアやテンポ感を抜いたら、設定を借りただけで「サザエさん」ではないし、そもそも原作や、50年も続いたアニメを超えようという考え自体に、大きな傲慢さを感じた。 関係者は「違う!」と言うのだろうけど、見せられたアウトプットからは「劇中に、(アニメの冒頭などでも使われる)漫画のネタを適当に織り込んどけばいいだろう」的な浅はかさすら感じられた。 そんな「これじゃない」サザエさんにあって、「サザエさん」という世界観をギリギリ成立させたのが松平健さん(波平)と高橋惠子さん(フネ)。 松平さん、高橋さんともに、アニメと声が似ているのもあるが、声が全く違っていても「あぁ、波平だ」「あぁ、フネさんだ」と思っただろう。 決め台詞以外の所作だったり、間の置き方だったり。そういった舞台での姿全てが、いかにも波平であり、フネであり。 お二人は、キャラクターを真似るのではなく、キャラクター像を演じたのだと思う。 特に第三話序盤で、カツオ、ワカメそれぞれとフネが1対1で会話するシーンは、本当にフネが2人を諭すようだった。 また波平が磯野藻屑源素太皆(磯野家のご先祖さま)と会話するシーンは、これぞ実写!と思わせるに十分なシーンだった。 個人的なハイライトはこの2つ。 一方で、藤原紀香さんのサザエはう〜ん、微妙。動きがこじんまりしていて、語尾を伸ばすものだから、コミカルというよりわざとらしくあざとさ全開でぶりっ子するサザエさんという印象だった。 新喜劇の茂造じいさんぐらいはっちゃけないと、アニメのサザエさん感は出ない。 むしろ、変に演じず、素の藤原さんらしく元気いっぱいな方が、サザエさんらしかったと思う。 カツオ(荒牧慶彦)は、いかんせん髪型も風貌も違い過ぎて、どうしてもカツオとは思えなかった。 バイト先での中島との話し方も、軽薄な感じで違和感が。 タマは、一言、可愛くない。 終演後は大千秋楽ということもあり、出演者それぞれの挨拶でしたが、感極まった出演者がいきなり号泣。 普段なら美しい光景ですが、こと今回に関しては「愉快なサザエさん」を期待していただけに、最初から最後まで湿っぽいサザエさんだなぁ、と思ってしまった。。(誰もが終わることを惜しんでいて、良いチームだったのは伝わりましたが) そんなわけで、期待外れの舞台だった。 |
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