無知な六人と六人 2017年10月1日(日)午後5時00分 会場:劇場ユースクエア 【概要】 名古屋を拠点にする演劇団体「演劇ガーデン」による「12人の怒れる男」のオマージュ作。 【感想】 まず最初に断っておくと、twitterなどで劇評を読む限り、「感動した!」とか「のめり込んであっという間だった」など概ね高評価ばかりだった。 沢山の人を楽しませた以上、本作は良い作品だったということ。そこに反論の余地はない。 なので、以下は大勢とズレており、的外れなものも多分にあると思うが、率直に感じたことを書く。 まずストーリーから。 2016年1月に34歳の女性が市内のホテルで遺体として発見された事件で、殺人罪などに問われた元女子中学生の公判が、9月25日(月)から29日(金)にかけて開かれることがわかった。 当事件は、被害者と元女子中学生の親子が住所不定で市内のホテルに長年宿泊していたことや、被告人が保険金目当てに殺人を行ったとみられることから、事件当時大きな注目を集め、事件をめぐって社会保障や教育についての多くの論争が巻き起こった。 なお、元女子中学生は容疑を否認しており、陪審が行われる予定だ。 ……というわけで、集まった陪審員による会話劇。「12人の怒れる男」へのオマージュ作品だ。 「12人の怒れる男」へのオマージュというと、私は嫌でも三谷幸喜さんの「12人の優しい日本人」を思い出します。好きなタイプの作品なので期待度高めだったのだが。 率直に言うと、脚本が弱いな、と感じた。理由は以下。 ・登場する陪審員の殆どが感情的過ぎ&頭悪かった。現実世界で6人集まれば、高確率で本作の登場人物よりも理知的な人が揃うと思う。 ・被告が陪審員たちのところに乱入するのはリアリティに欠けると思った。 ・陪審員長の思考力が、前半と後半で変わり過ぎていると感じた。また被告の乱入で「この子はやっていない」と確信したようだが、正直、あの乱入にそこまでの説得力はない。一体何が彼女をそこまで動かしたのか不明。 ・最後まで有罪を訴えていた女性。前半の審議後半にトイレに行くが、トイレタイム長すぎやしないか。葛藤していたにしても。 ・後半で理論派だった男性が、真犯人を特定する場面で、類推を元にあたかも断定するような言い回しをしていた。なんかそれまでのキャラと違っており強引だった。 そんなわけで、違和感なく夢中になれる物語ではなかった。 で、個人的に一番弱いと感じたのが、"ユーモアがない"ということだった。 本作は、徹頭徹尾シリアス。それは良いのだが、終始同じテンションで、同じ味が続くというか。スパイス不足な感があった。 審議にあたって本来持ち込んではいけない週刊誌からの情報を思い切り証拠に使っていたのも(話として)ちょっと強引に感じた。 警察が都合の良い情報しか出していない、という主張だとしても、色々誇張し過ぎかな、と。 かえってリアリティが薄れていたように思う。 その他、「無知な六人」の「無知」という言葉の意味が、イマイチ理解できなかった。 チラシにも「他人事の時間だ」とあるので、「無責任な6人」とか「無関心な6人」を包含しているのかな? 私は最初にタイトルを見た時、てっきり前半の6人は限られた情報を論理的に推理した結果、有罪に辿りつく。 そして全く別の6人が1つだけ手掛かりが追加された状態で論理的に推理した結果、無罪に辿りつく。 みたいな展開を期待していた。 手掛かり1つを知らない(無知)な6人と、知っている6人で、結果が全く変わる……的な。 あるいは、オーソドックスなオマージュなら、みんなが無罪だと思って、でも1人だけ有罪で、論理的推理からみんな有罪派になっていって、でも最後、もう一山、大逆転があって最終的に無罪とか。 そういう意味では、もうひとひねり欲しかったな、と思った。 あと「12人の怒れる男」ってよくオマージュされるけど、せっかくならエッセンスだけ切り出して、陪審員室(って言うのかな?)じゃないシチュエーションに置換したものも観てみたいなぁ、とこれは個人的な希望。 「複数の人たちが喧々諤々議論しながら、最終的な結論にたどり着く」という部分だけ切り出すなら、例えば、場所は史学科の一室とか。 考古学者たちが遺跡から発掘された色んな遺品や史料から、その場所で過去何が起こったかを類推したり、他の史料とかとの整合から裏取りして実証していって結論を導き出す、みたいな。例えばだが。 色々書いたが、冒頭の通り沢山の人が夢中になったなら良い作品だと思う。 なんだかんだ、私も観ている間はどんな展開になるのかな?と始終思っていたし。 |
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