ラ・マンチャの男 2002年8月19日(月)午後1時00分開演 会場:帝国劇場 脚本:デール・ワッサーマン 音楽:ミッチ・リー 演出:松本幸四郎、江口正昭 オリジナル演出:アルバート・マーリ 作詞:ジョオ・ダリオン 振付・演出:エディ・ロール セルバンテスとドン・キホーテ:松本幸四郎 アルドンサ:松たか子 サンチョ:佐藤輝 牢名主:上篠恒彦 カラスコ:福井貴一 アントニア:松本紀保 神父:石鍋多加史 家政婦:荒井洸子 隊長:大石剛 【ストーリー】 16世紀の末、スペイン、セビリア市の牢獄そしてミゲール・デ・セルバンテスが想像するさまざまな場所。 教会侮辱の罪で牢に入れられたセルバンテスと従僕。 新入りの投獄者をからかおうとする囚人達。 騒ぎを聞いた牢名主は、セルバンテスを詰問したあげく、裁判をやろうと言う。 なんとか場をおさめたいとセルバンテスは、即興劇による申し開きをすることを思いつく。 「さて皆様、私は1人の男の役をつとめます。私の創り出したその男を見てやって下さい!名前をアロンソ・キハーナ。さして若くはない田舎の郷士・・・」 アロンソ・キハーナは、凡俗な世間に愛想を尽かし、考えに考えた末、ついには何世紀も前にいなくなった遍歴の騎士となって、全ての悪を滅ぼさんがため、世界に飛び出そう、という破天荒な計画をひねり出した。 人呼んで、ラ・マンチャのドン・キホーテ。 従僕のサンチョを引き連れドン・キホーテは出陣する。 単なる旅籠を城、旅籠にいた女性・アルドンサを美しい想い姫・ドルシネア、風車を4本の腕を持つ悪の怪物マタゴーヘルと信じるドン・キホーテ。 アロンソの館では、姪のアントニア、カラスコ博士、家政婦、神父たちが、アロンソ(ドン・キホーテ)を心配している。 自分のことを、ドルシネア姫と呼び、夢を見るドン・キホーテに次第に惹かれるアルドンサだったが、ラバ追い達に襲われてしまう。 しかし、打ちひしがれた彼女を見ても、ドン・キホーテの心は変わらない。 そんなドン・キホーテに、鏡を以って、現実を姿を見せつけようとする騎士(カラスコ博士) 鏡の騎士に破れ、瀕死の状態のアロンソ(ドン・キホーテ)の館に、アルドンサが駆けつける。 しかし、キハーナは、アルドンサが誰だか思い出せない。 だが、アルドンサが、「キハーナがドン・キホーテとして行っていた」ことを話し、ドン・キホーテは夢ではなかった、ということを徐々に思い出すキハーナ。 最後の力をふりしぼり、再び夢を追おうとした瞬間、ドン・キホーテは、死に包まれた・・・。 さて、こうして芝居が終わりを告げた時、牢獄に梯子が降り、セルバンテスは、裁判へと連れて行かれる。 牢名主の最後の問い、「ドン・キホーテは、セルバンテスの兄弟か?」という質問に、セルバンテスはこう答える。 「われらは2人ともラ・マンチャの男です」 (パンフレットのストーリーを元に、要約) 【客入り】 台風13号の来襲にも関わらず、勿論、満杯。 10代から70代〜80代まで、幅広い年齢層。 男女ともに多かった。 【感想】 "ラ・マンチャの男"と言えば、松本幸四郎のライフ・ワークとも言える舞台です。 一度は観てみたい・・と思っていたのですが、偶然にも、私が行ったのが、1000回公演目という記念の日! 当時のメモが、そのまま残っているので、以下に掲載します。 --ここから-- ラ・マンチャ行ってきました。 記念すべき1000回目の公演を観ることが出来ました。 客席には、巨人の松井、アテルイに出演中の市川染五郎も来ていましたが、1番客席から歓声を浴びていたのは、小泉純一郎(この時、総理大臣でした) "アンタ、のんびりしてて、いいんかい!"とツッコミの1つも入れたくなりますが、総理お付きの人が沢山良席を陣取っていたのは、チョット、ムカつきましたね。 本当に観たいけどチケットが手に入らなかったお客さんが可哀想だなぁと。 お付きがいるのは仕方が無いにせよ、もう少し客席まで入る人数は減らせなかったのかな〜と思いましたが、難しいんでしょうか? さて、まずは、「ラ・マンチャの男」への感想です。 やはり、哲学的なテーマですね。 夢を生きるということ。 周りから見れば、気が狂っているかもしれない。 傍から見れば、単なる旅籠なのに、ドン・キホーテにとっては、城に見える。 傍から見れば、薄汚いアルドンサも、ドン・キホーテにとっては、美しい想い姫・ドルシネアに見える。 傍から見れば、単なる風車も、ドン・キホーテにとっては、4本の腕を持つ悪の怪物マタゴーヘルに見える。 そうした夢想に対し、カラスコ博士は、鏡を以って「逃避だ」とする。 鏡に、ドン・キホーテ自らの醜態を晒しだし、真の姿を見せようとする。 しかし、実際に、ドン・キホーテを演じているのは、セルバンテスというカトリックへの侮辱で牢獄に入れられた名も無い男であり、セルバンテスがこのような芝居を始めた理由は、裁判における主張なのだ、というあたりが簡単に割り切れない複雑さをもっているな〜と思いました。 他に感じたことは・・いつも思うのですが、松たか子さんのセリフは(歌詞も)聞き取りやすいです。 はっきりと話されているんですね。 ミュージカルの歌は、普通の歌と違って、やっぱり歌詞がハキハキと聞き取りやすい方が有り難いです。 しかも松さんの役柄も(外面的には)荒々しい感じだったので、叫ぶ感じの歌は凄く良かったです。 ただ、幸四郎さんは、低音が苦しいかなぁと感じました。 ちょっと歌詞が聞き取り辛かったです(セリフも)。 個人的には、荒井洸子さんの演じた、ドン・キホーテを心配する家政婦の声は聞き取り易かったです。 テンポ良いセリフが続き、牢獄内で演じられるドン・キホーテの世界に浸っていた時に、駒田一さんの床屋が、「三瓶です」の真似で、「床屋です」とやったのは、チョットなぁ・・。 息を抜く場面は必要だと思うんですが、あそこでやらなくても良いのに(客席はウケてたけど) 空気読んでくれよ・・・という意味では、1回1回の歌が終わるごとに「ブラボー!!」と叫んでた客席のおばさんがかなり目立ってました。 ・・・となんだかんだ書きつつも、私は楽しめました。 席が遠かったので、大丈夫かな〜等と思っていましたが杞憂でした。 逆に、あまり近いよりかは、全体を眺められて良かったかも。(←まぁ、もし近くに座ってたら、あの迫力を間近で感じられて最高!とか書いてそうですが(^^;)) 1000回はあくまでも通過点。 ボイストレーナーの方からは、咽喉もあと10年は大丈夫!と言われているそうなので、今後も期待したいです。 (本編の感想はここまで) さて、ラ・マンチャが終わった後は、松本幸四郎さんの還暦祝い(今日が60回目の誕生日!)&1000回達成ということで、舞台上でお祝いがありました。 まずは、牢名主役の上篠恒彦さん等による花束贈呈とコメントから。 その後、森繁久弥さんからのメッセージ(自分は、芝居で1000回を目前にして、体力的な理由で断念したが、良きライバルであるラ・マンチャが1000回を達成したことに、敬意を表する、みたいな感じでした)、幸四郎さん御本人のコメント(コメントに入る前に、客席のおばさんから、「おめでと〜!」の声。「有難う」と応えてました)がありました。 最初に「今日は台風の中、わざわざ、有難うございます。きっと台風13号もお祝いに来てくれたんでしょう(笑)本当に私は嵐を呼ぶ男です(笑)」 と、言ってました(笑) 様々な関係者への謝辞の後に行われた、1000回を振り返って、という幸四郎さんのコメントの中で1番印象的だったのは、 「私が、ラ・マンチャを通じて、学んだのは、夢というものは、見るだけのものではなく、その夢を追う人の心意気だということです。心意気さえあれば、いつか必ず夢は叶うものです」 というような内容の言葉でした。 やはり、1000回を達成した幸四郎さんが言うと、説得力のある言葉ですね。 あとは、「私(幸四郎さん)の父や祖父も帝国劇場の舞台を踏んだということで、この劇場は、私と縁が深い」というような話もしてました。 その後、「私はあまり政界の方とはお付き合いが無いんですが、以前から、ラ・マンチャを好きだと言ってくださり、観に来てくれている方がいます。変革に取り組んでいる方です(笑)」と言って、小泉総理を紹介。 その後、舞台「アテルイ」に出演中の市川染五郎さんが、客席から駆けつけ、花束を渡し、何か一言と言われて「ここにいる凄い役者は、私の父です。松本幸四郎です。私は父を誇りに思います」みたいなコメントをしていました。 その後、かつて幸四郎さんが、日本人として唯一、マーチンベック劇場で「ラ・マンチャの男」に出演、成功させたことを記念し、最後は、幸四郎さんの「見果てぬ夢」(英語ヴァージョン)もありました。 あとは、娘の御二人にキスされて喜んでました。 全員が去ってからも拍手はしばらく続いていました。 この拍手が、今日の公演を物語っているのではないでしょうか。 --ここまで-- |
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