Mr.Win's Room

Mr.Win's Room

Home / Profile / Music Works / Essay / Report / Kyushu


第3回全国学生演劇祭


※今回は、観劇前に情報収集したメモは残し、観た日(いずれも2/24)の感想を追加する形式にしています。

公演期間:2018年2月22日 (木)−26日 (月)
会場:ロームシアター京都 ノースホール

【概要】
全国学生演劇祭は、札幌・東北・東京・名古屋・大阪・京都・愛媛・福岡でそれぞれ運営されている学生演劇祭から、推薦を受けた団体が集い上演を行うイベント。
観客賞と審査員賞、それらの合算による大賞が選ばれる。

Aブロック


劇団宴夢 (酪農学園大学) 札幌学生対校演劇祭 推薦
twitterアカウント:
@rgu_enmu

profile:
1979年旗揚げ。地元である江別、札幌で活動する老舗劇団。
作品に芸術性、文学性は一切無く『くだらなさ』の追求に全てをかけている。

メモ:
昨年、「大四国帝国」で会場を笑いに包んだ北のエンターテイメント集団。
何も考えないで楽しめるストレートな笑い(そして時折ちょっと人を喰ったような、とぼけたようなムード)が持ち味。

今回の作品タイトルは「熱血!パン食い競走部」というそうだ。
タイトルの時点で、既に色々と想像してしまうぞ(笑)
公式twitterを見る限り、去年大健闘していた香川ちゃん(松田弥生さん)が「身体を仕上げると言って焼きそばとたこ焼きと菓子パン2つを摂取しておりました。」など、やっぱり人を喰ったような面白さが既に滲み出ている。

今回も彼らは笑いを巻き起こしてくれるはず。
宴夢、そして同ブロックで出場する楽市楽座による爆笑タイムは今大会でも屈指の見どころになるのでは、と期待しています。

感想:
吊るされたデカメロンパンが嫌でも目に入るステージ。
開演して「おー、昨年観た役者だー、今年も帰ってきたなぁ」など思いながら観ていましたが。
前回はうどんを喰いまくった香川県が、今回は小松君という役柄で、パンを食べまくってウケていたのは、もう彼女の強みというか。新喜劇的なお約束。ツイッターの宣言通り、本当にメタボな体に仕上げていました。

どうしても去年と比較しながら観てしまいましたが、
・「大四国帝国」の秘書に相当するクールな存在が無かった
・「翌日、廃部になりました」のオチは、前回の「ほら、皆さんが虐げるから、四国がアメリカの属国になっちゃったじゃないですか」的なノリノリの理不尽さに比べ若干弱かった
・前回の終演挨拶での「すいませんでした!」に象徴されるワルノリ感が薄かった。
・前回の開演前の「ニヤリ」に匹敵する笑いはなかった(終演後のお掃除タイムで、もう一笑い欲しかった。小松君が散らばったお米を食べだし「お前やっぱり米に寝返るのか!」的な感じでも良いので、なんか暴れて欲しかった)

この辺の理由から、「大四国帝国」の方が好きです。

でも、ラストで黒子を使ってメロンパンをゲットしたシーンは面白かった。
個人的に、1つリクエストできるなら、マネージャーがビンタするシーン。3回目は逆の方向からやって欲しかった。で、先生がリアルに出血とか。

私、宴夢と楽一楽座(マシカク)のノリは好きなので、これからも注目しています。


フライハイトプロジェクト(早稲田大学、東京藝術大学ほか) 東京学生演劇祭 推薦
twitterアカウント:
@FreiheitProject

profile:
枠にとらわれない発想力で、演劇と向き合うプロジェクト。様々な分野で活動する大学生で構成されている。
メンバーは流動的で、企画に合わせて変動。
団体名である「フライハイト」は、ドイツ語で「自由」の意。
毎公演、新しいメンバーを募集して作品創りを行う。

個人メモ:
東京学生演劇祭・審査員部門大賞作品。
主要な立ち上げメンバーで制作を担当している市川奈々さんのインタビューによると、本作は、唯一、彼女が男性ではなく女性...祖母、母からインスパイアされた作品で、祖母・母・娘の3世代に渡る物語。祖母の死を登場人物たちがどのように受け止めるか、ということが焦点。
市川さんの祖母が昨年の春、(結果的に深刻ではなかったものの)病気と診断され、家族にとってはハードな時間だったことが本作に繋がったそうだ。
余談ながら、このインタビュー、英語ながら、幼少期をタンザニア、パキスタンで7年過ごしたことや、劇作家の道を選んだ理由なども含め、色々と興味深いので、事前に読むとより楽しめるかも。

講評からも、清らかで善なる女三代記だと推察される。
武者小路実篤が好きな私には、きっと合うと思うので今から楽しみ。
また「外部の目に晒される経験」が増え、表現が「内々」にならなければ、より良くなるといった趣旨の講評もあった。
東京学生演劇祭を経て、全国に向けより磨かれた舞台が楽しみ。
要注目!

感想:
↑の通り、市川さんのインタビューを読んでいたので、最初から「死」をテーマにした作品という前提で観ていました。
でも、「清らかで善なる女三代記」ではなかったですね。シンプルに「死」と向き合う作品でした。
自閉症気味の少女、しっかり者に育ったその母、そして明るい祖母。
少女や母の幼少期回想など、ノスタルジックな場面もありますが、どれも各々が"死"とどう向き合っているかを想像する情報なので、全体を通してヘビーでした。
自分自身の家族にも投影し、やはりヘビーな気持ちになった45分間。
劇を通して、避けて通れない辛い、哀しい現実に向き合った時間でした。(途中から、リアルに自分のこと考えてた)
市川さんの感じたハードさを伝えるという意味では、まさに伝わった舞台でした。


元気の極み (大阪府立大学×大阪大学×神戸大学) 大阪短編学生演劇祭 推薦
twitterアカウント:
@genkinokiwami

profile:
第四回大阪短編学生演劇祭のために結成。
休学中で無隣館所属の中村奏太、一回生で劇団六風館所属の中尾多福、一回生ではちの巣座所属のキャメロン瀬藤謙友によるユニット。
名前の由来は、2年前の同演劇祭で「(およそ全団体に対して)元気がない」という講評を、中村さんが受けたことに由来。
個々の学生はそれぞれ元気を持ってやっているのに、「そんな曖昧な言葉にさらされてたまるか!」という気持ちから、団体名に元気を組み込み、さらに「元気の極み」と名付けることとなった。

個人メモ:
今回上演される「せかいのはじめ」は30分の中で少女の一生を描いた作品だそうだ。
そして注目すべきは今大会唯一の一人芝居であるということ。
元気の極みをもって見事、第四回大阪短編学生演劇祭で最優秀賞を受賞した一人芝居。
これも要注目の作品。
なお同団体は、クラウドファンディングで制作のための支援金を募集している。(こちらから「元気の極み」で検索)
観劇して共感した方は是非、ご支援を。

感想:
その場限りの時間を共有する30分の中で、はじまりとおわり、存在を巡る物語というのは分かるのですが、タイムウォッチを使い、何度も時間を数えるというのが、若干やり方として説明的過ぎてチープに感じました。
主演の中尾さんは大変堂々としていて、熟年の貫禄というか学生離れした年季を感じました。


楽一楽座 (徳島大学) 四国学生演劇祭 推薦
twitterアカウント:
@raku1rakuza0519

profile:
2017年5月19日、中西一斗を中心に旗揚げ。
第二回全国学生演劇祭出場の「劇団マシカク」を前身とする。
徳島を中心に活動する、楽しく笑顔の絶えない劇団。

個人メモ:
昨年、同居する男性3人によるコメディ作品で多くの笑いをとった劇団マシカク。
その後継団体ということで、マシカクから引き継がれたであろうリズミカルなやり取りに、どんな+αがあるかが楽しみ。
今回のタイトルは「Say! Cheese!!」。英語で「はい、チーズ!」のことなので、写真がキーワードなのだろうか?
キャストを見る限り、今回も登場人物は3人のようだ。
去年以来の中西さん、玉木さん、そして初登場の小笹さんに注目。
ヨースケ、オザッサーと役柄が芸名にリンクしているようで、かなり地に近い役柄なんだろうか。
マシカクで、良いタイミングで音楽を入れていた音響さんもいるので、期待高いです。

中西さんのツイッターに「全国で出会ったコント集団劇団宴夢との誓いを果たすため審査員を笑い殺すため…」とあるので、是非とも、宴夢との夢のブロック競演にて審査員を笑いの渦に巻き込んでほしい。

感想:
これも楽しみにしていた団体。
劇中で一見脈絡がないように見える、笑える脚本を書いていく中西さん。でも、それがちゃんと1つの筋になっているのがいいですね。
玉木さんが脱いだ時に近くの男性客から「オォ……」というどよめき声(?)、 中西さんが脱いだ時、近くの女性客から「キャー」という満足声(?)が聞こえたのも印象的でした。
ただ、笑いを取る上で、下ネタと脱ぐのは最終手段だと思うので、次はハードル上がりますね。

踊りに時間をかけ過ぎていた感があり、軽妙さだけなら「自憂空間」の方が好き。
楽一楽座の舞台にある新喜劇的なムードは好きなので、次はどんな方向に向かうのか楽しみです。


Bブロック

ヲサガリ(京都工芸繊維大学) 京都学生演劇祭 推薦
twitterアカウント:
@wosagari

profile:
京都工芸繊維大学を拠点にする団体。フク団ヒデキを母体に生まれる。
舞台上に生身の人間らしさをもちこむことを目指す。極めて小さな世界のお話を得意とする。
あらゆるところからのヲサガリを頂き、成長していく。
学生生活もあと僅か。もうヲサガらない。
最年少24歳だが全員、正真正銘の学生。平均年齢26歳。

個人メモ:
京都学生演劇祭で観た団体さん。
ネタバレはできないので多くは書けないですが、ネオなヲサガリたちは全国でどんな反応を受けるでしょうか!?
頑張れ、京都代表!

感想:
京都学生演劇祭で観た時は、そこまで印象に残っていなかったのですが、今回は大変面白かった!
観た場所やコンディションも影響していると思いますが、ここまで印象が変わるとは!
特に、ヲタ同士のラインでのやり取りをセリフで表現する場面は、今日観た10組の中でも、特に笑いが起こっていた場面でした。
あと、最前列で観ていたので、ヲタ芸シーンの後とか、若干汗のにおいが感じられ、それがまた妙にヲタっぽくて良かった。

自信ありませんが、京都学生〜の時は、ラストがちょっと違ったと思うのですが……どうだったかな。(なんか、アイドルがアイドル時代を否定するようなこと言ってなかったっけ?)


喜劇のヒロイン(日本大学) 東京学生演劇祭 推薦
twitterアカウント:
@comedy_heroine

profile:
2016年活動開始 第五回名古屋学生演劇祭で観客賞を獲得。
報われ過ぎているヒロインへの妬みを原動力にくだらない笑いとの心中を目指す。
迫力もない、芸術性もない、くだらない、喜劇のヒロイン。

個人メモ:
東京学生演劇祭の講評によれば、台詞が軽妙でテンポよく進行する日常を舞台にしたコメディ(そしてシュールな笑いも内包)のようだ。
この通りなら、思いっきり私好みなので、今から楽しみでしかない。
プロフィールを読む限り、宴夢と気が合うのではないか、と思う。
北の宴夢、東の喜劇のヒロイン、西の楽市楽座。あとは南があれば揃うなっ……!!(←何が!?)

感想:
東京での講評では"コメディ"と表現されていましたが、私が感じたのは"ブラックユーモア"。
「世にも奇妙な物語」チックな世界。そしてラストでお姉さんが妥協して陥落する表情なんか、「笑ゥせぇるすまん」よろしく近くに喪黒福造でもいるのかと。面白かった。
どの演者さんも、素人っぽさを感じさせない演技から、相当練習したんだろうな、とも思いました。


砂漠の黒ネコ企画 (九州大学ほか) 福岡学生演劇祭 推薦
twitterアカウント:
@blackcat_desert

profile:
劇作家Granous B.K Ponserさんが発起人となり立ち上げた自主企画。
演出の木下智之さんは2016年に九州戯曲賞を受賞している。
メンバー・作風共に一切不定で、出会いと発見を積み重ねながら創作活動を実施。
作家の人間観に根差し、激しくも弱く悲しい人間達の生の慟哭を描いた自作戯曲を上演。

個人メモ:
私は九州贔屓である。
福岡も熊本も鹿児島も大好きだし、年に何度も行っている。
しかも九大ということで、これは応援したいところ。
なお同団体の公式You Tubeアカウントにて、過去作品が2作品ほどアップされています。
余談だが、九大のミスターコンテストは面白いよ。

感想:
終演後頭に浮かんだのは"So, what?"という言葉で。
で、その理由の大半は、恐らく前日夜に東京→京都の移動&長時間観て、丁度疲れていたからだと思いますので、感想はパス。


Cブロック
三桜OG劇団ブルーマー(とうほく・仙台三桜高校演劇部OG) とうほく学生演劇祭 推薦
twitterアカウント:
@bloomerOf

profile:
三桜高校演劇部卒業生で構成されているブルマ好き集団……ではなく、bloomerで咲かせる人という意味。

個人メモ:
全国学生演劇祭にある公式プロフィールなどから、コメディタッチの作風と思われるブルーマーさん。
隕石が落ちて地球が滅びる前夜を描いた作品ということで、さて彼女たちは何をやるんだろうと楽しみ。
Cブロックは恐らく、各団体のベクトルが一番異なっていると思うので、観る側も色んな一度で3回美味しいはず。

感想:
まず一言。部屋が汚い。地球が終わろうと、世界が滅びようと、もう少し整理整頓しないといけない(笑)
はっちゃけているのは、それなりにテンション高く面白かったのですが、地球が終わる原因が隕石でなければならない理由はあまり感じませんでした。
隕石ではダメな理由もなかったのですが、せっかくなので、もっと隕石を生かした物語にしてあったら、より面白かったかも。
あと、終演後、ステージの片付けをする際、赤いシャツの女性が見た目から想像できないぐらい物凄く機敏だったので、そこを劇中でも生かせればより良かったと思います。


LPOCH(京都教育大学) 京都学生演劇祭 推薦
twitterアカウント:
@LPOCH_

公演専用特設ホームページ

profile:
読み方は「りぽっく」。青倉玲依さんを中心に大阪、京都を中心に活動。
マスコットキャラクターのうりぽーはLINEスタンプになっている。

個人メモ:
主宰の青倉さんによると、教育大学だけあって先生になった友達が周囲には多数。
そんな「(新任の先生である)私のお友達」と「私自身のあること」を掛け合わせたのが本作とのこと。

私は京都学生演劇祭で観ていますが、その際、教育大学らしい作品だなぁと思いました。
ネタバレはしませんが、青倉さんが演劇を通じて啓蒙、教えるということにアプローチした結果、この作品が生まれたんだろうなぁ、などと思っています。
色んな目的をもった色んなタイプの演劇が集まることも演劇祭の魅力。
よりブラッシュアップされた作品で、らしさを発揮してくれることに期待。

感想:
京都の時は、場面緘黙症の主人公が女性で、小学校の同級生が男性だったと思うので、ストーリーは同じなれど、役者さんも話のムードも変わっていましたね。2回目ながら飽きもなく観られました。
同級生役の女性が溌剌としてて良かったので、劇としては今回の方が気に入っています。
小パンフとして場面緘黙症に関する紹介が配布された(しかも、終演後に読むよう、茶封筒でちゃんと糊付けまでしている)のは、この劇の目的を考えると大変良い試みだと思います。



はねるつみき(名古屋・岐阜大学ほか) 名古屋学生演劇祭 推薦
twitterアカウント:
@spring_blocks

profile:
高校演劇の大会で出会い気が合った同士で結成。団員は全員高校を卒業したばかり。
若さを言い訳にもプライドにも都合いい感じに使いながら頑張ります。

個人メモ:
名古屋学生演劇祭の劇評で、「独特の言語センス」、「謎の多い作品」、「狂気」といったフレーズがあり、一方で観客賞も受賞している点から、バランスの良い作品なのではないかと興味をもっている作品。
各SNSでも、「良かった!」という感想を方々で見かけており、個人的には、今大会最も注目している作品の1つ。

感想:
劇評にあった程、狂気や謎の多さは感じませんでしたが、
・神さまが一番、常識的な人間らしい感情を持っている
・語られない設定は多いものの、大筋は分かり易い
・語られない設定に対し色々想像できる。余白が広い分、想像でスケールを大きくできる
・抗わない退廃的なムードと、それに抗おうとした女の子が次の神になる皮肉
この辺から、今回観た10作品で一番面白かったです。

あと統治者・変死というと、某国(北も南も)を想起したり、"神さま"でなくて"天●"とか"将●様"に置き換えたら、全然違った主旨になるなぁとか思ってもみたり。
色々込みで、バランスがいい作品だと思いました。

※上記団体の他、啓明劇芸術研究会(韓国大邱にある啓明大学校の演劇サークル)がゲスト出演。
2/26のみの出演のようなので、残念ながら観れない。。

<ボーナストラック>
劇団後付け

Bブロック後、劇団・後付けによる3分ショートコントがありました。
ウケていたし、あの状況でちゃんとやりきったことに、まずお疲れ様でしたと言いたいです。
その上で。京都タワーに関するコントだったのですが、せっかくお客さんをインタビュアーに見立てているのだから、終盤で「何か質問はありますか?」的な展開だったら尚面白かったかも(次のCブロックまで時間があったので、数分ならできたと思う)
私「人間としての強みを発揮する場合は、どんな風に発揮しようと思っていましたか?」と聞きたかった。
あと、京都学生演劇祭の時に、ネタの間で流していた音楽を最後に流して欲しかった。


過去大会の出演者などの近況:
・公式ツイッターアカウントのモーメントで「各地の演劇祭情報出場団体の近況まとめ 」有り。
・実行委員長(吉岡ちひろさん)アカウントのモーメントにて「2018年もよろしくお願いします!うごきだす京都学生演劇祭参加者」有り。

※各団体のprofileは、各団体の公式ツイッターアカウントプロフィールや、学生演劇祭での紹介プロフィール等より。

copyright1
(制作:木戸涼)

(C) 2001-2025 copyrights.Ryo Kido