エッセイ33 楽器店のできごと 先日、東京に帰った時のこと。 代官山から渋谷の方まで「あ〜、やっぱり東京は広いな〜」などと思いながら歩いていた。 碁盤の目の中である程度全てが揃ってしまう京都市内に比べると移動距離の長い東京。久し振りだと慣れるのが大変だ。 iPodがBeach BoysのSMiLEを2周流し終わった頃、渋谷に到着。 知り合いに会いに行く途中、なんとなく楽器店に入るとピアノ・コーナーがあったので試奏。 すると、妙に大きな声が聞こえてきた。 よくよく見ると、横はマイクコーナー。ある男女が熱心にマイクを試していたのだ。 試奏ならともかく、人が多い中で(それも結構狭いエリアで)全力で試唱する人というのは中々見たことがない。 普通、"マイクテスト"とか"ツーツーワンツー"とか、まぁやってもそのぐらいだと思うのだが、その男女は本気で試唱……というか熱唱していた。 それもよく聴くと結構不気味なリズムでどうやらラップを歌っているようなのだ。 なんとなく居たたまれなくなった私はピアノから離れた。 一体何の曲をそんなに熱唱してるんだろう?? フト思い、すれ違いざま、歌詞をよく聴いてみた。 南無阿弥陀仏ッ!!南無阿弥陀仏ッ!! お経かよっ!しかも目が本気だよっ!!よくよく見ると歌詞カードじゃなくて手にあるの教典だよっ!! しかも女性だと思ったら長髪の男だよっ!!! 不意打ちともいえるお経ラップ。「やっぱり東京は広い」と思ったのだった。 |
|