エッセイ28 待合室 風邪を引いて耳鼻科に行った時のこと。 その耳鼻科は診察室と待合室がカーテンで区切っているだけなので、診察室の中の喋り声が嫌でも聞こえる。 私が待合室で待っていると、中からこんな会話が聞こえてきた。 看護士さん「はい、じゃあ雨宮さん(←仮名)、聴診器をあてますので上半身全部脱いで下さい」 雨宮さん「あの……」 看護士さん「はい?」 雨宮さん「(おずおずとした声で)カツラもでしょうか……?」 看護士さん「……それは結構です」 雨宮さんの突然のカミングアウト。なぜかこういう時に限ってシーンとしている待合室。 診察室から出てきた雨宮さん。 待合室の人々の視線は、その頭部に集中。 心なしズレていた気がした。少し切なかった。 |
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