エッセイ25 電車と少女 電車に乗った時の話。 横にいた中学生とおぼしき少女がフラフラしている。 最初「半分寝てるのかな?」と思ったが、駅に到着し乗降がある中で横を見たらマスクをして顔が真っ赤になっており明かに体調が悪いのが分かる。 「おいおいマズいんじゃないのか」 と思ったら、前の席が空いたのでその子に譲った。 すると、近くの席に座っていた中年男性が「おー座ったか。次の駅だからな」と少女に声をかける。 この男性、父親なのだろうか?でも父親なら、自分が座る前に、重病の娘を座らせるだろ、普通。 ということは……まさか誘拐犯と誘拐された少女!? でもそれなら、何故、電車に!? もしや少女は完全に騙されており、アリバイ作りもあって堂々と電車に!!?? 赤川次郎の小説でありそうなシチュエーションだ。 もしそうなら、私はこの男性を取り押さえなければならないのでは。。 でも証拠がない。いきなり取り押さえたら、むしろ私が犯罪者になってしまう。 何か証拠が必要だ。この男が誘拐犯だという確固たる証拠が。 ……いや、待てよ。もしかしたら親子だが仲が微妙なだけなのかもしれない。 例えばお母さんの連れ子と再婚相手とか。向田邦子の小説でありそうだ。 よく見ると、2人の間に微妙な距離感を感じる。 充分、有り得そうだ。 だが、たとえ血がつながっていないお父さんと子供でも仲が良い例だってある。 明石家さんまと、大竹しのぶの連れ子・二千翔(にちか)君は血は繋がっていないが実子以上に仲が良い。 「二千翔が、自分のことを"お父さん"と呼びにくいだろうと思い、子供たちに"ボス"と呼ばせるようにした」というさんまのエピソードは有名だし、さんま・しのぶ離婚の際も、二千翔は「ボスの方に行く」と言い張ったという。 こういうところ、さんまは凄い。彼は、ただのお笑いモンスターではない。 ……というか、この少女、明らかにインフルエンザではないか!?このしんどそうな顔!! うつる可能性があるではないか!もう週末だというのに!! ……いや、この少女は苦しんでいるんだ。うつるなどと言っては失礼だ。 ここは少女の回復を祈るのが人道というものだ。 このように、想像を膨らませ、さんまや善悪の葛藤をこじらせているうちに、途中の駅で親子(?)は降りて行った。 無論、誘拐犯の証拠などどこにもない。 ただ、妙に寒気がする。どうも色々とこじらせたようだ。 |
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