エッセイ2 遠足 小学生の頃の話。 小学校で楽しい行事というと卒業旅行、運動会、学芸会、展覧会などあるが、誰もが楽しめるのは遠足ではないだろうか。 卒業旅行→団体行動が嫌な人にとっては、苦痛かも。 運動会→運動が苦手な人にとっては、苦痛かも。 学芸会→人前で演技するのが嫌いな人にとっては、苦痛かも。 展覧会→美術が苦手な人にとっては、苦痛かも。 その点遠足は団体行動だが、泊まるわけでもないし運動神経やその他諸々もあまり関係無い。 で、そんな遠足のお約束といえばお菓子だ。 1人500円までという決められた範囲でお菓子を買い、なるべく多く持っていくわけだが、どのお菓子を持っていこうか選ぶのが中々一苦労だったりする。 いや。苦労しない人もいる。 同じクラスのS君は何の苦労もしなかった。 何故かって?彼は買える限りのうまい棒(1本10円)を持ってくるからである。 500円までだから、50本のうまい棒を買うわけだ。 そして遠足の時、他のクラスメートに「ねぇ、うまい棒とそのお菓子交換しない?」と持ちかけ、様々なお菓子をせしめようという魂胆である。 なるほど。確かに上手い作戦かもしれない。 事実、小学4年の遠足で、彼は50本のうまい棒を50種類の様々なお菓子、金額にしておよそ800円ほどに変えていたのだ。 「ねぇ、その夏みかんとこのうまい棒、交換してよ。これ美味しいよ♪」 普通ならば、うまい棒1本と夏みかんならば夏みかんの方が良い(というか、うまい棒5本よりも夏みかんの方が良い)気もするが、彼の話術の前では、うまい棒がまるで神戸牛のように美味しそうに見えるのである。 だが、そんな彼にも思わぬ誤算が待っていた。 小学5年の遠足の前日。彼はいつも通り50本のうまい棒を購入し、リュックに詰めた。 翌日は雨だった……。 結局、遠足は中止。彼の部屋には、うず高く積まれたうまい棒だけが残ったのである。 |
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