Mr.Win's Room

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エッセイ19 ジャイアン・ライヴ

Live At Akichi / Takeshi Goda (Jaian)

遂に行って来ました。剛田武の伝説の空地ライヴ。
以前から観よう観ようと思っていたんですが、私がファンになった時には、剛田さんはライヴ活動を中止して、レコーディング・アーティスト化していたので、観る機会が無かったのです。
それだけに、実に7年振りとなる今回のライヴ、しかも、数多くの伝説を生んできた会場、空地でのライヴ、そして、TONY MusicからBVEXへの移籍後初となるジャイアンのソロ・ライヴということで、非常に楽しみにしていました。
まずは、当日の様子から。
告知されていた空地の開場時間は、5時30分(←これは、学校帰りの生徒達でも、立ち寄ることが出来るように、というジャイアンの粋なはからいですね)
しかし、4時30分の時点で、続々と集まる人!人!人の波!!
いかに、ジャイアンのライヴが渇望されていたかがよく分かります。
客席には、コロ助やキテレツといった、ジャイアンの影響を受けてデビューしたアーティスト達の姿も見えました。
そして、遂に予定開演時間の6時!
しかし、ステージは、静かなままです。
10分が経ち、20分が経ちました。
しかし・・・・ジャイアンは姿を現しません。
もしかして中止!?
そんな悪い予感を打ち消したいかのように、客席からは、怒号と悲鳴が溢れ、その声は、次第に"We Want Jaian!!"の大合唱へと変わっていきました(←この辺り、ストーンズの武道館公演を彷彿とさせました)

そう・・・"We Want Jaian!!"
ジャイアン!!頼む!!現れてくれ!!
会場中が、その想いに包まれ、もうこれ以上待ち切れない!!という頂点に達した6時43分!!
会場が暗転し、ステージ上に大きな影が見えました!!
大歓声が巻き起こる客席。
しかし、その客席の歓声よりも一層大きく、そして力強く、ジャイアンのヴォーカルが響いたのです。
"Hey, Hey!My Friend!"
この出だしは・・・!!
ジャイアンが、無二の親友、スネ夫に書いた名曲、"Hey!Suneo"です!!
公式アルバムには収録されておらず、質の悪いブートレグばかりが出回っていたこの隠れた名曲が1曲目とは・・・。
あまりにも意外な選曲に、驚きました。
しかし、もっと驚いたのは、アカペラだったということ!!
そう・・・ステージ上に立っているのは、ジャイアン只一人。
そして、彼はギターを弾くでも、ピアノを弾くでもなく、ただ、マイクを片手に歌っていたのです。
しかし、時に激しく、そして、時に優しく歌うジャイアンのヴォーカルは、どんな楽器よりも魅力的に響きました。

そして、この後、休む間もなく演奏されたのが、"Dear, My Jaiko"。
ジャイアンのベスト盤には必ず収録される傑作。
初期の代表作であるこの曲は、ジャイアンが、妹で漫画家のジャイ子が売れなかった時代、励ますために書いたと言われている名バラードです。
サビの"Dear....Dear...My Jaiko....のび太はいつか振り向くさ"の部分では合唱が起こっていました。

あっという間に2曲が終わった後、ジャイアンが言います。

"よぉ、みんな待たせたな。でも、お前等が待ったかいがあったって、思わせてやるぜっ!!
俺のものは俺のもの、お前のものも俺のものだっ!!"

ジャイアンの人生に対する姿勢を表現した有名なフレーズが、まさか実際に聞けるとは・・・。
このセリフは、元々、雑誌"Rockin' 音頭"でのインタビューで、"あなたの座右の銘は?"との質問に対し、当時は剛田武名義で活動していたジャイアンが答えた言葉ですね。
当時は、"ちょっと売れたから天狗になっている"とか言われましたが、しかし、この姿勢を崩さなかったからこそ、ジャイアンは今だに支持を集め、伝説的なアーティストで居続けられるのではないでしょうか。
まさにジャイアンの信念とも言うべき言葉です。

そして、歌われたのは、ジャイアンが初めて書いたハード・ロックというエピソードを持つ、"roots"
そのタイトルゆえに、ジャイアンが、彼のルーツの1つであるハード・ロックへの敬愛の念を表した曲だと言われたこともあり、それも正しいのですが、後にジャイアンは、"いや、あの曲は、源のために作ったのさ。源を英語で"origin"とか・・・あと、"roots"とも言うだろ?"とコメントしています。
世界的バイオリニストとしても知られる、源しずか(現・野比のび太夫人)も、小学生の頃から、ジャイアン達と仲の良い友人だったとのことです。
事実、この曲のレコーディングには、しずかも参加しており、中盤のバイオリン・ソロで圧倒的な技術を披露しています。
しかし、ライヴで、あのソロを再現出来るのか・・・・?と思っていたら!!なんと、ステージの脇から、しずかが登場したではありませんか!!
空気を引き裂くかのような、しずかちゃんのバイオリン。
聴くものを鞭打つかのようなサディスティックな音色です。
このバイオリンこそが、この曲に、ハードなだけでなく、不思議な妖艶さを与えているのです。
観客席もさすがに圧倒されて静まりかえっていましたが、演奏が終わると、もう凄い歓声!!

"なぁ、みんな。最近は少年犯罪が増えて、教育も見直さないといけないとか、ゆとりが大切だとか言われてるけど、"ゆとり"って何だよ?
俺達がガキの頃だって、暇だったわけじゃない。
学校には宿題だってあったし、母ちゃんだって、店の手伝いだの、勉強だのってうるさかった。
でも、心のゆとりはあったし、頭だって使ってたぜ。
遊び道具が無い時だって、ある道具から、自分で遊びを作ろうとしてたんだ。

今は、情報も沢山あるけどよ、もっと、目で見るだけじゃなくて、生で感じ合える何かが必要なんじゃないか?
昔は、ここみたいな空地が沢山あった。俺達は野球をやったり虫を取ったりしたさ。
でも、それだけじゃない。もっと大きなことを学んだんだ。
つまり・・・・自分と周りとの付き合い方だよ。
自分と折り合いをつけながら、どうやって周囲と接していけばいいか・・・そういうことを一緒に学んだからこそ、本当のダチも沢山いるんだ。

ダチ・・・そう。そんな友達とも、喧嘩はよくしたさ・・・。
喧嘩は小さい頃に沢山しとくべきだよ。どこまでやって良くて、どこからがやっちゃいけないか・・・そういう境を知っとかないといけないからな。
最近、ニュース見たら、"ムカツイタから"ってだけで、いきなりナイフで切りつける奴もいるみたいじゃねぇか。
あんなの異常だぜ。
・・・俺にしてはぐちゃぐちゃと喋っちまったな。
OK....次の曲は、そんな沢山の思い出が詰まった空地への想いを歌った曲だ。
聴いてくれ。"空地セレナーデ"だ"

そんなジャイアンのMCで歌われた空地セレナーデは、新しく何かが作り出されるということが、必ずしも、豊かになる、ということとは違う、ということを伝えてくれました。

"次の曲は、俺の弟分が参加するぜ。紹介しよう。My soul brother...ブタゴリラだ!!"
そういって現れたのは、キテレツやコロ助と共にバンド"The Kiteretu Encyclopedia"で活躍しているブタゴリラでした。
2人は、1本のマイクで、"タケコプターがあったなら"をデュエットしてくれました。
この曲とブタゴリラは、関連が無いように見えますが、実は、彼は、ソロアルバムで、カヴァーしてるんですよ。
なんと、ライヴでの演奏も、そのカヴァー・ヴァージョンである、アコースティック・ギターによる演奏でした!!

それにしても、しずか、ブタゴリラとゲストが出るということは、まさか、他にもゲストが!?
そして、もしかしてそのゲストは、かつてジャイアンと共に伝説のバンド、Everywhere Doorのメンバーだった、あの3人では・・・!?

"なぁ・・・俺は1人でも充分、お前達を熱狂させる自信がある。でも、今日のライヴは、俺自身も、かつてないぐらいに熱狂したいんだ。
俺自身も最もノせてくれるバンドは、1つしかないさ・・・。分かるよな?俺の言いたいことが・・・・"

ま・・・まさかっ!!

"聴いてくれっ!!Everywhere Doorの10年ぶりの新作、"Fantasy Pocket〜不思議なポケット〜"だっ!!

そして!!なんと、空からギターの轟音が鳴り響いてきた!!
あの姿は・・・スネ夫だ!!ドラえもんも、のび太もいるっ!!みんなタケコプターを頭につけて、空からステージへと降り立ってきました!!
もう、自分の目の前で起こっていることが信じられず、涙で正視出来ませんでした。
凄い・・・凄すぎるっ!!

そして、この後、再結成・・・いや、新しく生まれ変わったEverywhere Doorによる怒涛の演奏が繰り広げられたのです。
今回の空地ライヴは、あと3公演残っているので、これ以上は書きません。
あとは、会場に行ったあなたが、自らの目で確かめて下さい。
そこに答えが待っているはずです。

今回のライヴは、本当に素晴らしいライヴだったので、是非とも、公式にリリースして欲しいですが・・・出るかなぁ。
TONY Musicに在籍していた剛田武時代と、現在BVEXに移籍した後のジャイアン時代の両方の楽曲が演奏されているので、利益配分をどうするか等、双方のレコード会社で協議が必要そうですね。
是非とも、両社には太っ腹なところを見せて欲しいものです。

(上記文章は、全部フィクションです。悪しからず)



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