Mr.Win's Room

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ロンドン ブライアン・ウィルソン、ロイヤルオペラ&ブリティッシュ・ロック探訪の旅 vol.10

London calling!! 今日は19日。只今7時30分。
昨日でBrian3Daysも終わり。ロンドンに滞在できるのも今日が最後。明日は帰国に向け朝から空の旅に出ることになる。
そんな最終日の今日は夕方までブリティッシュロック探訪の旅に出て、夜はROHでプッチーニの三部作の観劇だ。
まずロックの聖地はどこに行こう?行こうと思っていた場所のうち、まだ行けていないところがいくつかある。どこに行くか慎重に決めなければ。。まさに"Time is money"な状態だな。
リストアップした"行きたい場所リスト"を見て悩む。
特に悩んだのがDartford駅だ。
幼馴染だった若き日のミック・ジャガーとキース・リチャーズが再会し、音楽の趣味が共通していることから旧交を温めた、まさにストーンズ出発の地。ファンとしては是が非でも押さえたい所だ。

しかしここだけは地下鉄から離れることになるので、Cheltonamの時と同様、どの程度の時間がかかるのか検討がつかない。
確かWaterlooから行けたはずだけど、路線もよく分かっていなかったりする。

問題は他に行きたい場所がロンドンの逆方向にかたまっているということ。
Dartford駅はロンドンより東にあるが、Olympic Studioやマーク・ボランが亡くなった現場は南西にある。
昨日時間切れだったHyde Parkやビル・ワイマンの経営する"Sticky Fingers"というレストランも外せないしどうしよう。。と悩んだが、結局、まずDartford駅に行くことに。

本によればLondon市内から1時間もかからないということだったし、Waterloo駅にはOval駅からすぐ行ける。
何よりもストーンズの物語のスタート地点に行かないわけにはいかなかった。

そんなわけでWaterloo駅に着き、とりあえず切符を購入。
Cheltonamの時と同様に、券売機で行き先の頭文字(D)を選ぶ。
主要な駅が並ぶ中、Dartfordは出てこない。Otherを押すと、出てきた。往復で20£ちょい。
さてホームはどこだろう?と電光掲示板を探すも見つからない。
駅員さんに訊いたところ「Dartford駅はここのホームじゃないわ。Waterloo Eastから出ているわ。あっちよ」と教えてくれた。
あ〜、なるほど。WaterlooはPaddington同様、色んな路線が着いている。Waterlooから階段を上ると、そのままWaterloo Eastに直結しているのだ。
感覚でいうと、渋谷で東横線から京王井の頭線に乗り換えるようなイメージ。梅田と東梅田ほどは離れていない。
どのホームかは電光掲示板を見るとすぐ分かる。Dartfordは終点なので、まんまDartford行きとして載っているのだ。ちなみにホームの電光掲示板は列車が来る数分前からcalling at 〜〜という具合に停車駅名が表示される。
電車に乗ると、月曜日なので通勤のビジネスマン&ウーマンが沢山。でも殆どが次のLondon Bridge駅で降り、Kidbrooke駅に着く頃にはかなり空いていた。
一方反対ホームには結構人が。Dartfordってベッドタウンなのか〜。
車窓から眺める田園風景。穏やかな日差しが降り注いでいる。殆どが住宅街でやっぱり市内中心部で働く人が多いベッドタウンなのだろう。
そんなことを思っていると、Dartfordまであと3駅に。早い!
この時、僕は身を持って、ミックキースとブライアンのロンドンへの距離感の差を知った。
ミックとキースにとっては、Piccadilly CircusもCarnaby Streetもちょっと行こうかな、という感覚で行ける。でもブライアンの場合、行くだけでも一苦労だ。
それでもブライアンは中心部に出かけてはブルーズやジャズのライヴを観て、ギターテクニックを盗もうと必死だった。
そんな若きブライアンの情熱が感じられたような気がした。

"Next station is Dartford!"

さぁDartfordだ!



ここがミックとキースが再会した場所!1961年10月17日の朝、ストーンズのストーリーが開いた場所!
昔読んだ山川健一さんの"ブリティッシュ・ロックの旅"のワンシーンが蘇る。(以下の斜体は本より抜粋)

ミックはDartfordの駅で電車を待っていた。彼の腕にはチャック・ベリーのアルバム"One Dozen Berries"があった。
Dartfordの駅の階段を、ギターケースをぶら下げたキース・リチャーズが降りてくる。




キースは緩やかにカーヴする二番ホームの先に、見たことがある男が立っているのを見つけた。あるいは、そいつが抱えていたチャック・ベリーのLPを見つけたのだ。



ゆっくり近づいて行って、キースは声をかける。
「ミックだよね?チャック・ベリーなんて聴くのかい?」




やがて電車がプラットフォームに入ってきて、ふたりはLondon駅に着くまでの40分間に、いかに自分がブルーズを愛しているかという話をした。

う〜ん、感動の場面!感慨に浸りながら、自分の方にやってくるキースを見るミック目線でも写真を撮ってみた。



そして、プラットフォームのベンチ。もしかしたら電車が来るまでここに座って話し込んでいたかもしれない。



ちなみにこの感動の場面を撮る時に、鳩にフンを落とされた。絶対にミックやキースも一度は経験していると思う。

……Dartford駅は結構長い。もしミックがキースの降りたのと逆側の端に立っていたら、2人は再会できなかっただろう。
物事が始まる時というのは色んな偶然が重なるものだ。ミックとキースは、いくつもの偶然の重なりで出会った。そして、この出会いが何十年にも渡り、今なお続く友情の出発になったはずだ。

せっかくなので駅で降りた。タクシーの運転手にミックやキースの家を知っているか訊いてみるがみんな「住所が分からないと行けないよ」とのこと。
あれ?"ブリティッシュ・ロックの旅"ではみんな知っていると書いていたけど。。
でも1人の運転手が「ミックの家は知らないけど、ミック・ジャガー・センターは知ってるよ」とのこと。
せっかくなので行って写真だけ撮ってきた。ミックも手広くやってるんだなぁ。





最後にDartfordの街をパチリ。



そんなわけで、再びWaterloo Eastへ。
ミックやキースの家探しを粘ることも考えたけど(といっても、他の運転手に訊きまくるだけだけど)今日は行く場所が多いからなぁ。

ところで、帰りの列車で「この電車、London Bridgeで止まりますか?」と確実にイギリス人と思われる男性から訊かれた。
余程訊きやすいオーラが出ているのか。実はLondonに来てから10回ぐらい電車や道を訊かれている(それも全部、流暢な英語を喋る白人の方ばかり)
そして何故か毎回、普通に答えている自分。なんか妙な感じだ(笑)

さぁ次に行くのは、60年代が終わり、70年代を彩った魔法を使うロックンロールスターゆかりの地、そしてAbbey Roadと並ぶ60年代ロックの最重要スタジオだ!
地下鉄でEast Putneyまで行きタクシーを拾う。地図を見る限り、いずれも最寄駅からは遠く細かい地図もないので歩くのは厳しい。
タクシーの運転手に早速交渉開始。

このガイドブックに載っているマーク・ボランが亡くなった場所とOlympic Studioに行きたいんだけど分かる?できれば、まず片方に行って写真を撮って、もう片方に行って写真を撮って、その後駅まで戻ってくるっていう流れでお願いしたいです。

しばらくガイドブックの地図を見た後、運転手のおじさんからOKサインが。やった!

で、どっちから行く?Olympic Studioから行った方が早く行けると思うけど。

じゃあ、Olympic Studioから!

というわけで遂にOlympic Studioへ。Abbey Roadも聖地だけど、僕にとっては、こここそがLondonで最も行きたかったスタジオ!



現在は音楽スタジオとしての機能はもう無かったはず(EMIとVirginの経営統合で、2009年にクローズした)
それでもThe Who, Small Faces, Oasis, Paul Weller, The Jam, Queen, U2, Pink Floyd, Jimi Hendrix、それにRolling Stones...多くのアーティストがここで作品を作っていたのだ。
特にStonesの60年代の傑作群は殆どがここで作られた。それを考えると本当にグッと来るものがある。



頭で"Beggar's Banquet"を流し感慨に浸りながら、タクシーは次なる場所へ。さぁマーク・ボラン最期の地だ。

生前「僕は30歳まで生きられないだろう」と言っていたマーク。恋人(不倫相手)のグロリア・ジョーンズが運転する車での帰途、マークは交通事故で即死する。
グロリアの飲酒運転だったようで助手席のマークが亡くなったのに対し、グロリアは軽傷だったらしい。



今でも花やメッセージが添えられているマークの事故現場。
日本でも20th century Boyはじめ、沢山の曲がCMや映画で使われている。
彼がかけていた魔法が解けることはまだまだ無さそうだ。



運転手のおじさんは、一緒にこの場所まで来て、マークの車がどんな感じで事故ったか詳しく教えてくれた。(なんでこんなに詳しいの?というぐらいに詳しかった!)





確かに林の中で、細く凸凹なこの道は事故を起こしてもおかしくない。グロリアも酔っ払って運転するなんて無謀だったと思う。
マークの胸像から続く階段には関係者(T-REXのメンバーなど)を紹介するゴールドプレートが埋め込んであった。

そんなわけでEast Putney駅に戻る。



さぁ次は昨日の続き。まずはHyde Parkへ!



いわずとしれたHyde Park。ブライアン・ジョーンズの追悼になったフリーコンサートが開催された場所。
頭の中では"Symapthy For The Devil"が。



広い。



とにかく広い。見渡す限りの野原。



フト、空を見上げた。日本と違い、低い空が迫ってくるかのよう。



そして公園に面している湖。アヒルが沢山いた。



湖沿いは、こんな感じでリラクゼーション・チェアが。いいなぁ、こういうの。
そんなわけで、Hyde Parkは20分ぐらいで観光終了。場所自体はただの公園だからなぁ(汗)
そして、元Rolling Stonesのベーシスト、ビル・ワイマンが経営するレストラン"Sticky Fingers"へ!
Hyde Parkの西端から南西側にあるPhillimore Gardensにあるこのお店、ビルもたまに顔を出すんだそうだ。



この日は工事中だったのか、外観は↑な感じ。



店内に入るとストーンズ関連グッズが山のように!!
これはブライアン・ジョーンズが実際に愛用していたギブソン・レスポール!



ゴールドディスクも沢山!



写真も沢山!



地下にあるトイレは、もしかして"Beggar's Banquet"仕様!?とドキドキしたが、残念ながら普通でした(笑)



洒落た感じで、店員さんも愛想の良い場所。



バーガーセットもボリュームありました。
さぁ、旅ももうすぐ終わり。タクシーを使って次に寄ったのは、有名なデパートHarrods。



1965年11月25日に、ビートルズのメンバーがクリスマス・ショッピングをするために借り切った場所だ。
夜になると電飾が灯されるが、その時間帯に来るのは難しい。なので昼間に写真をパチリ。
ここでも知り合いなどへのお土産を購入。う〜ん、まさに観光気分(笑)
デカい買い物袋が売っており、実用的だったので購入。これが帰りの空港で役に立つことになる。
ただデパートで買いたいものは正直あまりない。買いたいものといえば、どちらかといえばPiccadillyのJermyn streetにあるのだが、それはまた別の話。

買い物を終え早々に出ると、続いて向かったのは大英図書館。





ここにはビートルズの歌詞をはじめ、沢山の音楽関連、それ以外も歴史的な遺産が所蔵されており、まさにコレクター大国・イギリスの象徴といった場所。
マルクスが30年間この地に通いつめて資本論などを執筆したのは有名。
入口まで行くと守衛さんに「来場の目的は?」と訊かれるので、「ビートルズの直筆の歌詞を観に来ました」といえばOK。入って左手のコーナーだよ、と教えてくれる。
中は当然ながら撮影禁止なので写真は掲載できないが、ビートルズ関連コーナーは、左手の文化所蔵ルームに入って左奥から少し右に行ったところ。丁度クラシックコーナーの次辺りだ。
以下、展示されていたものを列挙すると、
1. ジョージの8行詩(未発表曲用?)
2. ピアノを弾く男(ジョン?)の絵付きの無題の詩
3. "Help!"の直筆歌詞 ⇒Helpの部分にアンダーラインが引いてあったり、上からグシャグシャッ!とヒステリックな線のなぐり書き跡があったり。当時の心情が現れていた
4. "Yesterday"の直筆歌詞 ⇒驚いたのは書き直しが全くないこと。夢の中で書いたというのも納得。あるいは清書したのか!?
5. "Ticket To Ride"の直筆歌詞 ⇒ブロック体で整った字。"Help!"に比べ落ち着いている。
6. "A Hard Day's Night"の直筆歌詞 ⇒筆記体で結構細かい字。機関車のアニメ画のカードに書かれている。
7. "Michell"の直筆歌詞 ⇒封筒の裏側に書かれている。かなり崩れた筆記体。

その他にも、万能の人レオナルド・ダ・ヴィンチのサイエンス関連の論文、テレンス・ラティガンのコーナー、ジェーン・オースティンのライティング・デスク、オスカー・ワイルドの"The Ballad Of Reading Gaol"の直筆原稿、クラシカル・ミュージックでは、HandelのMessiah、Mozart Horn Concerto in b flat K 447の直筆の譜面、Haydnがロンドン在住時に書いたSymphony No. 96の譜面、Beethovenのチューニングフォーク、ElgarのThird SymphonyやSchubertのAn die Musikなど、もう物凄い所蔵の数々!
魅入ってしまいました。(そしてマグナ・カルタの手稿本まであった!)

ボリュームに圧倒されくたびれた足を引きづる。もうすぐブリティッシュ・ロック探訪の旅も終り。ちょっと感傷的な気分になる。
最後に行くのはビートルズを象徴する場所、Apple Recordsがあったビルだ。
Piccadilly Circusまで戻り、Savile Row Streetへ。入って少し行った右側にあるのがAppleのはず。う〜ん、ガイドと同じビルがないなぁ。
場所としてはこの辺なんだけど。おかしいなぁ。え〜と、手前から数えて1つ2つ……このビルかなぁ?なんか工事してるし違うなぁ。横のビルかなぁ?結構立派だけど。



でもなぁ、なんか違うよなぁ。1F、店じゃないはずだし。
あ、なんか観光ツアーの団体が来たよ。あらあら、なんか横で止まってるよ。……もしかして!!



観光ツアーのおじさんが英語で喋っている。

はい、皆さん。ここがビートルズで有名なアップルがあった場所です。彼らが解散前に屋上でライヴをやった建物でもあります。残念ながら今は工事中ですが。

げげっ!やっぱりこれなんだ!しかも工事中かよ!!
なんてこったい!はるばるロンドンまで来て、ブリティッシュ・ロック探訪の旅のラストが工事中なんて……(苦笑)
……とここで思った。最後の最後ですっとこどっこいなラストを用意している。これってまさにビートルズの真髄じゃないか!だって実質ラストアルバムの"Abbey Road"でも、ラストは"Her Majesties"!
感動や感傷で終わるのもいいけど、やっぱりユーモアを持っておこうぜ、というブリティッシュロックからのメッセージのようにも思えた。

というわけで、今回のロンドン旅行におけるブリティッシュ・ロック探訪の旅はこれで終わり!
改修中のアップルビルの屋上を眺めながら、僕は屋上ライヴ最後のジョンのようにこう呟いてみた。

どうも有り難う!このオーディションに受かったものと確信しています!



(2011/09/19)



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