Mr.Win's Room

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佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ2010 キャンディード

 

2010年7月24日(土)午後2時開演
会場:兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール
指揮:佐渡裕
演出:ロバート・カーセン

ヴォルテール/パングロス博士:アレックス・ジェニングズ
キャンディード:ジェレミー・フィンチ
クネゴンデ:マーニー・ブレッケンリッジ
オールド・レディ:ビヴァリー・クライン
カカンボ:ファーリン・ブラス

【概要】

キャンディードは18世紀のフランス人作家・ヴォルテールの小説をもとに、劇作家リリアン・ヘルマンの台本、そしてレナード・バーンスタインが音楽を手がけたコミック・オペラです。
バースタイン自身が「靴の中の小石」と呼んでこだわり続けた作品で、晩年には、最終決定版を残しておくべく楽譜に何度も手を入れていたそうです。
その模様を見ていたのが、当時、バーンスタインのアシスタントだった佐渡裕さん。佐渡さんから見ても、当時のバーンスタインの本作への取り組みは「鬼気迫るというか、執念に近いものだったと思う」とのこと。
1956年の初演は73回で閉幕となる大失敗でしたが、バーンスタインの音楽はカラフルで素晴らしいの一言。
また当時は赤狩りに対する反抗やユーモア
が、そして今回の上演でもブッシュやオバマについてのセリフがあるなど風刺も効いており、後年再評価されている作品です。
なお、この奇想天外な物語を書いた原作者ヴォルテールもかなり波乱の人生を送った人です。
見栄っ張りでけんかっ早く、投獄や追放に処されることもしばしばだった彼は度重なる追放を受け、ヨーロッパ中を旅したそうで、その後宮廷に戻って出世するも、宮仕えが性に合わず、結局、苦い思いを抱いて宮廷を去ります。
その結果、辿りついた結論が「人生って、時に不条理だ」というもの。
そして64歳で書いたのが本作だったのです。ヴォルテールの結論には続きがあります。「でも、人生って悪いもんじゃない」

【ストーリー】
ヨーロッパ中部の架空の国ウェストフェリア。
領主の子息マクシミリアンとクネゴンデが、メイドのパケット、そして素朴な性格のキャンディードと共に、城で仲良く暮らしていた。

彼らの教師パングロス博士の教えは「この世界は、神の意思によって最善に造られている」ということ。
どんな物事にも、そうなってしかるべき理由がある。
だから人間にとっては、与えられた世界をそのまま受け入れることが一番の幸福だ、という。

ある日、クネゴンデと恋に落ちたキャンディードは、城を追い出されてしまう。
ほどなくウェストフェリアで戦争が始まると、クネゴンデは無残に殺され、パングロスも病に冒される。
キャンディードは新天地を求めパングロスと共に命からがら船出するが、それも沈没。
さらに大地震が発生、何千もの人々が死んでしまう。
社会の群集心理による火炙り裁判。
パングロスは、それでも「世界は最善に造られている」という考えを捨てない。

度重なる不幸と災難の中で、数奇な運命の持ち主オールド・レディや純朴なネイティヴ・アメリカンであるカカンボ、悲観論者マーティンなど、魅力的な登場人物たちとの冒険が繰り広げられ、キャンディードは次第に師の教えに対する疑問を感じるようになる。

本当に、この世界は最善に造られているのだろうか。
僕らはただそれを甘受していればいいのだろうか。
それが本当の幸福なのだろうか。

ついに、死んだはずのクネゴンデやマクシミリアン、パケットら、かつて共に学んだ友達と再会し、彼らが同様の苦難に出会っている現実を目の当たりにしたとき、キャンディードは、目の前の世界を自分の力で耕していくことが大切なのだ、ということをつかみ取る。
(公式ウェブサイトより)

【客入り】
年齢層は高め(40代〜50代とおぼしき人が多いが、若年層もチラホラ。満員)


【感想】
オペラを観に行ったのは物凄く久しぶりで、楽しみにしていたのですが。いや〜、良かった。
バーンスタインは指揮者としてよりも作曲家として好きで、彼の作品を佐渡さんが指揮した"VIVA! バーンスタイン"は結構聴いていた1枚。
キャンディードのオープニングは特に好きな曲でした。
なのでキャンディードの音楽は以前から聴いていたのですが、生は別格です。
2階席だったので佐渡さんのダイナミックな指揮も見ることができました。

ブラウン管式のTV画面を模したステージにヴォルテールの顔が映って、序曲が流れ一幕スタート!という演出は洒落ていたし、まさにTVのチャンネルを変えるが如き、めくるめく展開。1つの場面が大体20分程度だったのかな?3時間の長丁場もあっという間でした。

私的ハイライトはいくつかあります。
大好きな序曲が聴けた劇最初の部分は、音楽的に最大のハイライト。
それにナタリー・デュセイの名唱で大好きになった"Glitter And Be Gay"。さすがにデュセイほどの細やかさや伸びはなかったですが、生で聴けて嬉しい限り。
他にもクネコンデがモンローばりの衣装で歌う場面はステージとしてのハイライトだし、オールド・レディーが自身の半生を語るシーンもいい。
そしてラスト。キャンディードが、クネゴンデは聖女でも何でもなく1人の普通の女性だったんだと悟り、その後、「何でもトライし、自分の畑を耕していくこと」が大切なのだと結論付けるシーンは感動のハイライトでした。
バーンスタインのカラフルな音楽はどれも素晴らしく、それが佐渡さんの指揮で聴けただけでも行った価値有り!です。
なお終演後は佐渡さんのサイン会があり、上述の"VIVA! バーンスタイン"にサインをもらいました。



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