僕たちの好きだった革命 2007年3月31日(日) 会場:梅田芸術劇場シアタードラマシティ 企画・原作・脚本・演出 : 鴻上尚史 山崎義孝:中村雅俊 未来:片瀬那奈 日比野篤志:塩谷瞬 タイト・キック:GAKU−MC 【ストーリー】 日比野篤志(塩谷瞬)は、母校・拓明高校の国語教師になって数年、どうしても教師という職業にやりがいを見出せないでいる。 文芸部の顧問を押し付けられた彼は、部室でボツになった原稿を見つけた。 筆者は、10年前に熱い時間を共に過ごした未来(片瀬那奈)だった。 タイトルは「僕たちの好きだった革命」。 1999年、日比野と未来のクラスに1人の中年男性が復学してきた。山崎義孝、47歳(中村雅俊)。 1969年の学園紛争で機動隊と乱闘中、シュプレヒコールをいいよどんでいるところ、ガス弾を受け意識不明に陥ったのだ。 30年ぶりに意識を取り戻した彼は母校に戻ってきた。 「今度こそ、恥ずかしくないアジ演説をやるんだ」という誓いと共に。 しかし、高校は様変わりしていた。“クラス討論”など存在しない。 生徒たちに主義主張は無く、話のネタはもっぱら流行の音楽と受験と恋愛と・・・。 教師たちも事なかれ主義で、今日もおざなりの服装検査をしている。 それを「学校側の検閲体制であり、生徒の主体性と権利に対するあきらかな侵害であり、挑戦だ」と憤る山崎は、教師にとっても生徒にとっても異分子だった。 そんな山崎と、日比野と未来たちが手を結ぶことになった。文化祭に人気のラップ歌手を呼ぶ企画を「歌詞がワイセツだ」という理由で学校側が一方的につぶしたのだ。 山崎に引っ張られるように、日比野、未来はアジビラを作り、グランドでの要求集会を呼びかけた。 「文化祭を我等の手に!」 だが、その活動も、かつて山崎と行動を共にした闘士たちによって阻まれることになる。 そして、その過激さに手を焼いた学校側が、文化祭自体を中止にすると発表するが・・・ (再演時の公式ウェブサイトより) 【客入り】 20代から60代まで満杯。 【感想】 「学生運動」と聞いて個人的に思い出すのは、1978年、ボブ・ディラン初来日時に放送されたテレビ番組・ルポルタージュにっぽん「ボブ・ディランがやって来た」。(再放送で観ました) ディラン来日時の会見、公演の映像やそこに訪れた著名人のコメント、番組ホストの村上龍氏が日本のフォーク歌手などにディランに対する想いをインタビューするという内容で日大闘争を指揮した秋田明大などもインタビューに答えていました。 「当時の日本におけるディランの一般的な捉え方はやっぱり"プロテストソングを歌うフォークの神様"だったんだな」と思うと同時に、番組で登場した中山ラビ、高石ともやといった名前にも興味を持って。それから、日本のフォーク・ソングも聴くようになり、和製ディランと言われた岡林信康さんや高田渡さん、ザ・ディランUといった存在も知るようになったのですが。 この演劇の主人公・山崎は、そんな学生紛争真っ盛りの時代に意識不明になり、現代の高校に戻ってくるという設定。 山崎を受け入れる現代の学生・未来たちとはおよそ30年間の月日の隔たりがあります。 30年間の歳月で変わった学生の価値観のズレで、完全に"空気が読めない男"状態の山崎が引き起こす可笑しさ。 一方で、好きなもの、正しいと思うことを実現するために熱くなることの普遍的な素晴らしさ。 普遍的な素晴らしさいえば、劇中で歌われる音楽も! 未来たちが呼んだラッパー・タイトキック(east end×yuriのメンバーだったGAKU-MCが演じています)の歌を聴いた後、未来たちに促されて山崎が好きだった曲「私たちの望むものは」をギターで弾き語ります。 言わずと知れた岡林信康さんの名曲。会場の中村ファンからは、大歓声が起こっていました。 私の隣には学生運動に参加していただろうおじさんが座っていたのですが感涙されていて、思わずもらい泣きしそうになりました。 音楽といえば"綺麗なお姉さん"の片瀬那奈さんは歌手としても好きですが、舞台女優として見るのは今回が初めて。 こういうコミカルなストーリーにハマっていて、セリフも聞きやすく良かったです。 中村さんが出演しているCMにひっかけて大正漢方胃腸薬を取りだすシーンなど小ネタも交えつつ、テンポ良い展開で最後まで楽しめましたが、個人的に、劇中で一番グッときた台詞は、 「昔はビートルズを聞いたら不良になると言われたのに、今はビートルズが教科書に載っている」 これはグッときましたね。リアル世代じゃないと言えない台詞。 しかし当時は、今だにストーンズが現役だとか(しかもミック・ジャガーが勲章もらったり)、ブライアン・ウィルソンが"SMiLE"完成させちゃうなんて思いもよらなかったろうなぁ。 第三舞台のステージは観たことがなく、鴻上作品も初めてだったのですが、面白かったです。 |
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