Mr.Win's Room

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Paul McCartney

 

"Driving Japan"
東京ドーム 2002年11月11日

-setlist-
1.Hello Goodbye
2.Jet
3.All My Loving
4.Getting Better
5.Coming Up
6.Let Me Roll It
7.Lonely Road
8.Driving Rain
9.Your Loving Flame
10.Black Bird
11.Every Night
12.We Can Work It Out
13.You Never Give Me Your Money~Carry That Weight
15.Fool On The Hill
16.Here Today
17.Something
18.Eleanor Rigby
19.Here, There And Everywhere
20.Michelle
21.Band On The Run
22.Back In The U.S.S.R
23.May'be I'm Amazed
24.Let 'Em In
25.My Love
26.She's Leaving Home
27.Can't Buy Me Love
28.Live And Let Die
29.Let It Be
30.Hey Jude

(encore)
31.The Long And Winding Road
32.Lady Madonna
33.I Saw Her Standing There

(encore2)
34.Yesterday
35.Sgt.Pepper's Lonely Hearts Club Band(Reprise)-The End


【感想】
今まで観たライヴの中で、1番泣いた回数が多いライヴになりました。
本当に感動した。原点を再認識したというか、自分がロックを聴くきっかけはビートルズだったことを思い出しました。

マスコミの報道にあった「否定しているが、本人にも最後の来日という意識があるはず。だから、成田から最終公演までの模様を映像に収め、映画で発表しようとしている」というのを見て、また、日本のファンに自分の言葉が分かるように、スクリーンで同時通訳までするという話を聞いて、「あぁ、本当に最後なのかな?」とか「ポールは、日本のファンのために、そこまでしてくれるんだ」という感動で、数週間前からジーンとしてました。

5時会場、7時開演のライヴの予定でしたが、周囲の観客の話によると、準備が遅れていたようで、サウンドチェックが4時30分過ぎ、開場は6時頃だったようです。
私は、6時20分頃、ドームに着きました。
年代層は、オールド・ファンから若いファンまで幅広く、この世代を超えた支持こそが、やっぱりポールの書いてきたメロディの凄さだと改めて感じました。
なんだかんだ言って、ビートルズ以上の人気を得たバンドは、存在しないですね。
今日の席は、1階3塁側スタンド41列目でした。
S席14000円というチケ代から客入りが心配されていましたが、ざっと観た限りでは、アリーナは、8〜9割、1階も8〜9割、2階は7割程埋まっていました。
グッズは、プログラムに、Tシャツやシール、メモパッド等が売っていました。

さて、予定よりも30分くらい遅れた7時30分頃、私の席の横を、アラビアンナイトに出てくるのお姫様のような格好をした女性が通り、"!?"と思ったのですが、その女性が、なんと、どんどんとアリーナ側に降りて行きます!
え?と思って観てみると、色々なブロックから、様々な服装の人々が降りてステージに上がり、ショーが始まりました(ポールのライヴとはあまり関係無いものでした。雑技団的な踊りや、箱の中に入った体の柔らかい女性など、東洋神秘的なものでした)
ショーを観ている間、「あぁ、もうすぐポールが出てくるんだ」というドキドキ感は高まる一方でした。
そして、20分程ショーが続いた後、午後7時47分。
大型スクリーンにヘフナー・ベースとポールのシルエットが映し出され、歓声が上がると遂に!!

"You say yes. I say no."

張りのある元気な歌声と共にステージ上にはポールが立っていました。
"Hello Goodbye"を歌うポールを観た瞬間、何故か、涙が止まりませんでした。
なんというか、DylanにせよStonesにせよBrian Wilsonにせよ、私は、必ずライヴの度に泣いてる気がしますが(^^;)、ロックを知ったきっかけがビートルズだけに、特別な感動です。
ビートルズ(特にポール)の曲には、他の誰の曲よりも、自分を振り返らせる力というか、楽しい想い出を喚起させる力があると思います。

で、ライヴの話に戻りますが、ポールよ!本当に60歳なのか!?
無茶苦茶、声出てるじゃないか!!
いきなり一気に盛り上がった後は、ポール・ライヴ前半の定番、"Jet"が炸裂、その後、畳み掛けるように、ビートルズ初期の黄金の名曲"All My Loving"!!
ここまでの流れで会場は総立ち状態になり、ポール!ポール!の声も一段と大きくなりました。

「お〜!東京!!みんな元気か〜い?」
日本語で挨拶したポールに大歓声が起こります。

「今日は僕のメッセージを同時通訳してくれるスタッフが8人いるんだ。みんな僕が言っていることを分かるよね」
と、例の通訳の話をしていましたが、正直、この通訳は役に立ちませんでした(笑)
ポールが話すのを追っかけて訳される上に、変換ミスだらけで打つのも遅い。
8人もいて何やってんだ?(笑)という感じでした(^^;)
ちなみに、「今、生で翻訳されていることの証拠に、彼等も知らないことを言ってみよう。"A dog was slip over a banana"(犬がバナナですっ転んだ)」というのが、"slip→sleep"と間違われ、"バナナの上で寝てる犬"と訳されていて(笑)ファンからも明らかに失笑を買っていました(笑)
この企画は失敗だったかな〜と思いましたが、それでも、こういった配慮をしてくれるポールの気持ちが本当に嬉しいですね。
ファンも、ポールのセリフをよく理解していました。
"Getting Better"から"Your Loving Flame"までをバンドと共に演奏("Driving Rain"を書いた時の話等をしていました)した後、バンドがステージから去ります。
ステージに残ったのは、ポール1人。

「今、ステージの上には僕だけ。つまり、僕と君達しかいないんだ」

アコースティック・ギターを手に取り、ポールのセリフが続きます。
「今から演る曲は、60年代に作ったものだ。ある黒人女性に関する人権問題についてね..."Blackbird singing in the dead of night..."」

ポールが"人権問題"という日本語を使っていて驚きましたが、 "Blackbird"はビートルズホワイトアルバムの中でも特に好きな1曲で、是非、聴きたかった曲なので、本当に感動しました。
ドームでアコギ1本の弾き語りというのも、凄いですが、意外と音が良く、音響も頑張ったな〜と思いました。
"Every Night"の後、"We Can Work It Out"が歌われた時も涙が出ました。
ジョンとポールの共作であるこの名曲を、バンドでなく、ポールが1人で歌ってくれるとは・・。
オリジナルでは、パイプオルガンのエンディングは、"ラ・ラ・ラ・ラ・ラ・ラ・ラ〜"とポールが歌っていました。

その後、「僕のマジックの箱だよ」、と言ってキーボードの前に座り弾きだしたのは、"You never give me your money"!そこから"Carry That Weight"になり、また"You never give me your money"歌ってくれました。
この曲も好きな曲なので、もう泣き通しでした。
しかも、その次は名曲"The Fool On The Hill"!
ポールが持つ、名曲の多さには本当に驚きます。

この後が今回のライヴのハイライトの1つになりました。
以下で、覚えている限り忠実に再現します。

"・・人は、時に、伝えたいことを伝えそびれることがある。
言いたいことを言えないで終わってしまうこと、特に言えないまま、相手が亡くなってしまうことは辛い。
僕にもそういう人がいる。ジョン。
次の曲は、彼と会話をしていると想像して作った曲だ"

"ジョンとの会話ね"(日本語)

ポールからジョンという名前を聞いた瞬間、また泣けました。
こうして歌われたのが、"Here Today"
そして・・・

"みんなはジョージがウクレレを弾くが好きだったって知ってるよね?彼の家に行くと、食事とかの後に必ずウクレレが出てくるんだ。はい、どうぞって感じで。
で、僕は、彼の曲を弾けるようになったよって、弾いてみせたことがあるんだ。こんな風に・・・"

ジョージの名曲"Something"が、ポールによるウクレレで歌われます。
スクリーンには若かりし日々から、晩年に到るまでのジョージの多くの写真が映し出されます。
沢山のジョージの写真を見る間に、多くの人が泣いていました。
今、感想書きながらも泣けてきます。
ただ、スクリーンの中に、寄り目をしている写真があって、そのおかしな顔に、チョット笑ってしまい、あぁ、このユーモアがジョージの素晴らしさだったんだな〜と思いました。

"僕がこうやって演奏してみせたら、ジョージは言うんだ。違う、そうじゃない。こうやるんだよってね」

今度は少し速めのテンポでウクレレを弾くポール。
どこか寂し気な、でも暖かいポールのコメントにまた涙涙。
もう、ジョンだけでなく、ジョージもいなくなってしまったんだな、ということを改めて実感して本当に泣けました。
しかし、ここから単に感傷的なステージにならないのが、ポールの凄さです。
"Eleanor Rigby", "Here, There And Everywhere", "Michelle"と、ビートルズ中期の傑作3つが一気に演奏されたのです。
"Here, There And Everywhere"は、ポールの中でも特に好きな曲なので、ここでも感涙が・・・。
"Michelle"の前には、「60年代当時、ジョンと一緒に、上流階級のパーティーに行ってフランス人の真似をしていたけど、バレた。僕はイギリス人だって。その時、いかにもフランス語という感じの言葉をいくつか使っていて・・・マ・ベル、とかね」 と、こんな感じのセリフを言っていました。

そして、この次もやはりハイライトの1つ、"Band On The Run"です!
リンダもいるウィングスの映像と一緒に、観客席がスクリーンに映し出されたのですが、女性客が手をWの形にしていて、まるで70年代当時にタイムスリップしたかのような錯角を覚えました。
もう、最高の気分でした。
その興奮を保ったまま、"Back In The U.S.S.R"へ!
この流れは凄まじいです。生で感じて欲しいです。
この後、"May'be I'm Amazed","Let 'Em In"を演奏して・・・

「今日、この会場にいる全ての恋人に捧げる、そして、リンダに」と言って、"My Love"が演奏された時には、又しても泣いてしまいました。
ポールにとって大事な人々、ジョン、ジョージそしてリンダもまたこの世にいないと思うと同時に、そうしたことを乗り越えて今、ライヴをやってくれているポールに本当に感謝したいです。

"She's Leaving Home", "Can't Buy Me Love"(これも聴きたかった)が歌われ、私がポールの曲の中でも特に大好きな"Live And Let Die"が遂に演奏されました。
過去のライヴと同様、ステージに仕掛けられた爆発が起こり、歓声がワ〜ッとあがります。
もう、本当に最高でした。
ちなみに1番最後の爆発の後に起こった煙に対し、ポールがむせる真似をしておどけてました。
明るくてユーモアがある。これこそが、他のどのバンドにも無い、ビートルズ、そしてポールの最大の魅力ですね。

で、この後は、怒涛の名曲オンパレードです。
"Let It Be"。この曲が無かったら、今頃、音楽を聴くことも無かったでしょう。
ロックにのめり込むきっかけとなったのは"Let It Be"だし、初めてギターで弾けるようになったのも"Let It Be"。
初めてギターで作った曲は、"Let It Be"で覚えたコード進行を弾いて作った"The Fate"だった、と自分のスタートを振り返ってしまいました。
で、勿論、泣いた。

次は、"Hey Jude"です。
歌う前に、
"もし良かったら、次の曲の最後を一緒に歌ってくれない?"
"一緒に歌いましょう"(日本語)
と言っていたので、もしかしてと思いましたが、やはり生だと格別です。
最後の"ダ〜、ダッ、ダッ、ダダダッ、ダ〜"の途中で、ポールが"男性だけ!"、"女性だけ!"、"さぁ、みんなで!"と言っていましたが、そういえば、Beach Boysの"Live In Knebworth"でも"Good Vibrations"がこんな感じだったな〜と思い出しました。

そして、本編終了、バンドが引っ込みます。
最初のアンコールは、ポールのお気に入りの名曲"The Long And Winding Road"。
しっとりと歌われました。
"もう少し聞きたいか〜?" というポールに歓声が応え、"Lady Madonna", "I Saw Her Standing There"が演奏され、総立ち状態の会場は、ダンス・パーティーと化しました。

さぁ、2度目のアンコール!
ポールが1人アコースティック・ギターを持っている。もう演る曲は分かっています。あれしかない。
"Yesterday"
世界で最も多くカヴァーされた記録を持つ、この曲を生で聴けたのは、やはり、感動です。
ここでも泣きました。

ポールは、「今日、感謝を言いたい人が何人かいる。バンドやスタッフ。でも、1番言いたいのは、君達だ」と言って、"you", "you"と言いながら、観客を指差していました。

最後の最後は"Sgt.Pepper's Lonely Hearts Club Band(Reprise)"〜~The End"という最高の終わり方。
"The End"の時は、ソロ・ギターが絡み合い、まるで、オリジナルのジョン、ジョージ、そしてポールの3人のギター共演が再現されたかのような凄まじさ。
今、ここにポールがいるんだ、ということを心から実感しました。

こうして、2002年のポールの来日公演初日が終わりました。
そして、感じました。
最後の来日公演?とんでもない!
絶対にまた来てくれる。これだけ素晴らしいライヴ、10代のバンドだって出来ない!と。

本当に最高のライヴでした。

それにしても、これだけ名曲を繰り出しても、まだ、"I'm Down", "I've Got Feeling", "Two Of Us", "Your Mother Shoud Know", "Get Back", "Freedom", "She's A Woman", "I Will", "Birthday"等が演奏されていないという事実がまた凄まじいですね。
いかにポールが多くのメロディを書いてきたかが分かります。

尚、アリーナ席で綺麗だったペンライトですが、アリーナの観客に先着5000名のみ配布されたとのことです。
明後日は早めに行かなくては!!


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